美春のお手伝い
美春の卒業が確定したことで修了式の手続きが始まっていく。
その最中に宗一郎が森下千夏に呼び掛けていた。
「…それでは次に森下千夏君の試験も始めようか。」
美春の次に森下千夏も試験を受けるようだな。
その試験内容も定かではないが、
美春に比べれば比較的楽な内容だと思われる。
「さて、きみの申請によると看護師として試験を受けたいということだったが、間違いはないか?」
「は~い!そうで~す!外科医も格好良いんですけど、どうせ受けるなら美春のお手伝いができる何かが良いな~と思いまして。」
…美春のためか。
「はぁ…。ホントに馬鹿なんだから…。」
「え~?そう~?」
本気か冗談か分かりづらい気楽な態度で答える森下千夏の発言を聞いた美春が盛大にため息を吐いているが、
当の本人は全く気にしている様子がなかった。
「まあ、美春のようにはできませんけど。美春のために何かをしてあげたいんです!」
「うむ。それも良いだろう。」
元気一杯の笑顔で答える馬鹿正直な想いを受け取った宗一郎は、
無理に咎めることをせずに森下千夏の考えを肯定していた。
「きみの試験に関しても色々と考えていたのだが…。」
一つの方針に絞って話を進めていく。
そうして会議室で続く試験の行方をもう少し見ていたい気もするのだが、
ひとまず監視を中断することにした。
…もう十分だろう。
おそらく森下千夏も試験を乗り越えて卒業を確定させるだろうからな。
すでに結果の見えた試験を眺め続ける意味はない。
まずは美春の結果さえ見届けられればいいと判断して水晶玉を優奈に返すことにした。
「観察はもう十分だ。」
「あ、はい。みなさん揃って卒業できると良いですね。」
…ああ、そうだな。
優奈は笑顔で水晶玉を受け取ってくれたのだが、
その笑顔はどこか無理をしているように感じられた。
「ちゃんと卒業したほうが良いですよね。」
…ああ、そうだな。
「………。」
美春の試合を見届けた優奈は、
少し寂しそうな雰囲気を漂わせている。
…やはり気になるのだろうな。
『卒業』
それは生きているという事実を隠して今を生きる優奈にはたどり着けない目標であり、
決して手に入れることのできない栄誉だからだ。
どう足掻いても俺と優奈には手に入れられない証になる。
「とても羨ましいです。だから…鈴置先輩の卒業を心からお祝いしたいと思います。」
「………。」
祈りとも言える想いを込めて美春を祝福する。
そんな優奈の姿を眺める薫の表情も少し寂しそうに見えた。




