暇なくせに
《サイド:美袋翔子》
ね~む~い~。
だ~る~い~。
し~ん~ど~い~。
はぁぁぁぁぁ…。
今日はもうひたすら眠いわ…。
はふぅ…。
あくびが止まらない。
もうね?
全然、寝れなかったのよ。
昨日の夜に沙織と二人で書類を片付け終えたのが深夜3時でしょ?
そこから寮に帰って。
お風呂に入って。
髪の毛を乾かして。
服を着替えて。
布団に入った頃にはとっくに4時を過ぎていたわ。
そして起きたのが6時なの。
たった2時間すら眠れなかったわ。
はぁぁぁぁぁぁぁぁ…。
どうして目覚ましを解除しておかなかったのかな?
自分で自分に疑問を感じているところよ。
いつも通りの時間に鳴り出す時計に起こされて眠りを妨げられてしまったの。
なんかもうね。
精神的にきつくて、
二度寝する気力さえなかったわ。
だから今は部屋を出る準備を整えたあとで食堂に向かって歩いているところなのよ。
ん?
どうして二度寝しないのかって?
それはまあ、あれよ。
今日も総魔に会えないかな~?って考えてるからよ。
昨日と同じように出会えたら幸せかもって思って、とりあえず出てきたの。
精神的にボロボロだから総魔っていう癒しが欲しかったのよ。
そんな期待を込めて食堂に向かってる途中なんだけど…。
はぁぁぁぁぁぁぁぁ…。
そんな都合の良い偶然は続かなかったわ。
総魔に会えないまま食堂にたどり着いちゃったのよ。
ちょっぴり残念な気持ちで食堂に入ってみる。
そして朝食を買いに行こうと思ったんだけど…
「よう、翔子!」
その前に背後から呼び掛けられてしまったわ。
朝から元気過ぎる声ね。
眠さ全開の今の私には嫌気すら感じる鬱陶しさよ。
正直に言って振り返りたくないくらい面倒に思うんだけど…。
無視すると余計にうるさいから、
大人しく真哉に振り返ることにしたわ。
「おはよう、真哉。もう動いて平気なの?」
「ああ、当然だろ。あの程度でいつまでも寝込んでるほど、俺は暇じゃねえからな」
「嘘ばっかり。どうせ暇なくせに…」
「はっはっは!!!」
私の指摘を笑い飛ばしてから、真哉は言葉を続けてく。
「そういや龍馬を見てねえか?朝起きた時にはすでにいなかったんだが、あいつも相当な怪我を負っていたはずだから、俺と同じように医務室にいたはずなんだけどな」
さあ?
私に聞かれてもね~。
誰がどこにいるかなんて知らないわ。
「私も今ここに着いたばかりで、まだ誰とも会ってないわよ」
「そうか。まあいいや、それよりも飯を食いに行こうぜ!昨日は晩飯を食いそこなったから腹が減ってしょうがねえんだ」
言いたいだけ言って歩き出す真哉。
いっそこのまま、真哉と別行動をした方が気が楽かもしれないわ。
なんてね。
一人になれる方法を考えてたんだけど…
「何してんだ?行くぞ!」
振り返った真哉が大声で催促してる。
う~ん。
仕方ないかな…。
真哉に呼ばれて歩き出す。
でもね~。
できればもう少し静かにしてほしいのよね。
とにかく今は、眠さ以上に疲れてるのよ。
慣れない書類整理で疲労感満載なの。
とても真哉の元気についていく気力は保てないわ。
はぁ…。
ため息を吐きながら真哉のあとを追ってみる。
何でそんなに元気なのか知らないけれど、
真哉は機嫌良さそうに次々と朝食を買い込んでいたわ。
うわ~。
朝からどれだけ食べるのよ?
見てるだけで気分が悪くなりそうな真哉の暴走を放置して、
私はスープとサンドイッチを購入してから席につくことにしたわ。
できればこのまま一人で静かに食事がしたかったんだけどね。
食事を始めた私の向かいに真哉が来ちゃうのよ。
「よし!食うか!」
テーブルの上に隙間なく乗せられるだけの量を買い集めた真哉は
周りの目を気にせずに勢いよく食べ始めたわ。
それはもうガツガツとしか表現のしようのない食べっぷりよ。
毎回毎回思うけど、
これだけの量の食材が真哉の体のどこに収まるのかしらね?
疑問を感じてしょうがないわ。
大食いにも程があると思うからよ。
食欲の出ない私とは対称的に、食欲全開の真哉。
呆れるほどの勢いで食べる真哉を無視しながら、
私はゆっくりとサンドイッチと向き合ってみる。
これでお昼に菓子パンを食べたら完全に偏食ね。
そう思いながらもサンドイッチに手を伸ばしてみる。
今は食欲がないから空腹を抑えられれば何でもいいわ。
まあ、総魔と一緒なら少しは食欲が出ると思うんだとけどね。
…と言うか、元気が出るっていう感じかな?
でもね~。
肝心の総魔がいないのよね。
総魔は今、どこにいるのかな~?




