選ばれた理由
…ふう。
…ようやく始まるのか。
予定通り午後2時に行われた校内放送によって呼び出しを受けた美春が試験会場に向かうのを見送ってから10分ほどが経過した頃に、
目的地に近付いた美春が校舎の屋上に姿を現した。
「やはり美春の試験は特風会で行われるようだな。」
校内放送で呼び出された美春は、
屋上に用意されている特風会に向かっている。
「どうだ優奈?監視は可能か?」
「あ、はい。大丈夫です。」
直接、俺達が見に行くわけにはいかないからな。
優奈が秘宝の力で美春の行動を調査してくれている。
…遠視が出来るのは便利だな。
美春と別れたあとも庭園に残った俺達は、
優奈の秘宝を通して見ることのできる水晶玉を利用して美春の行動を眺めることにしていた。
「特に問題はないか?」
「たぶん大丈夫だと思います。特に妨害を受けるような危険性は無いと思います。」
優奈の実力であれば何も問題はないはずだ。
それでも念のために確認してみると。
試験の準備によって何らかの結界や外部からの干渉に対する妨害工作が行われているということは特にないようだった。
「このまま見れると思います。」
どうやらこのまま美春の試験を観察できるらしい。
優奈の報告を聞きながら水晶玉を覗き込んでみると、
美春は扉の開かれている特風会の内部へと進んでいた。
…この場所が選ばれた理由はおそらく。
特風会の内部が魔術の使用に適していることと、
試験を行う監査官が特風の生徒であることが理由だと思われる。
…最も有効的な試験会場が御堂のために封鎖されていて使用できないという理由もあるだろうけどな。
学園の各所に存在する検定会場の多くは竜の牙の襲撃によって壊滅的な被害を受けている上に、
下位の生徒達に会わせた中小規模の結界では美春の魔術を押さえきれないという理由もあるのだろう。
…そもそも俺の個人的な理由で学園の魔石を外してしまったからな。
検定会場の結界を維持するための魔力が不足しているという理由が最大の理由かもしれない。
本来なら試験のために使用されるということはありえない場所だが。
それでも特風会が使用されることになった理由はそれだけ美春の実力を高く評価しているということでもある。
…おそらくこの程度の配慮は必要だろうな。
美春の実力を測るのなら、
それ相応の場所を用意する必要があるはずだ。
「この場所が用意されたのは、それだけ宗一郎も美春の実力を認めているということだろう。」
他の場所では試験が行えないと判断させるだけの実力が今の美春にはあるということだ。
「これからどんな試験が行われるのか、少し興味が出てきたな。」
単純な力比べではない試験。
医師としても。
戦士としても。
どちらの成長も願う美春のために用意された試験の内容に興味を持ちながらも水晶玉を眺めていると。
室内に入り込んだ美春の前に宗一郎が歩み寄ってきた。




