試験予定時刻まで
そうして午後1時30分を過ぎる頃に、
薫と優奈はお箸をおいた。
「もう無理~!」
「私もお腹一杯です。」
…だろうな。
薫はどうか知らないが、
優奈は普段以上に食べていたように思う。
「「ご馳走さまでした~。」」
二人揃って満足して一息つく間に、
美春はほっと安堵の息を吐いていた。
「喜んでくれて良かったわ。」
「実際に旨かったからな。ありがとう。」
「え?あ、う、うん。どういたしまして。」
最初から最後まで恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる美春は、
食事の前と同様にてきぱきとした動きで早々に空っぽの弁当箱を片付けていった。
「美春先輩を尊敬します♪」
「良い奥さんになれるでしょうね~。」
「あ、あははは…っ。」
いつまでも誉め続ける優奈と薫に笑顔で対応しているものの。
その表情はどう見ても困っているようにしか思えない。
「誉められるのには慣れていないようだな。」
「あ~…うん。普通に恥ずかしいかも。」
曖昧に笑いながらも一通りの荷物を片付けていく美春は、
食後のお茶だけを残して後片付けを終えたようだ。
「ま、まあ料理の話はどうでもいいんだけどね。それよりも…。」
…ああ。
もちろん美春の言いたいことは分かっているつもりだ。
だが、その前に一つだけ訊ねておこうと思う。
「俺達はまだ時間があるが、美春はまだ会場に向かわなくても良いのか?」
すでに試験予定時刻まで30分を切っているからな。
この状況でゆっくりと話し合う時間はないと思うのだが。
「あ、うん、それなら大丈夫だと思うわ。そもそもどこに向かえば良いのかも知らないし、準備ができたら校内放送で呼び出すって聞いてるから、しばらくは大丈夫だと思うわ。」
…そうか、それならいい。
そういうことなら時間を気にする必要はないだろう。
「今のうちに説明しておこうか。」
美春が知るべきこと。
魔法使いとしての力の使い方を話し合うことにした。




