生きる糧
…もう良いな。
優奈の確認をとったことで、
次に美春に視線で合図を送る。
ただそれだけで美春も俺の考えを察してくれたようだった。
「もう良いのね。」
俺の考えを汲み取って魔術を解除してくれた。
その直後に室内の各地でほっと安堵の吐息が漏れるなかで、
市村と浦谷が五十鈴菜々子の身体を支えに向かう。
「菜々子!」
「菜々ちゃん!」
…それで良い。
二人が五十鈴菜々子を想えば想うほど呪いの効果が高まっていくのだからな。
「ここから先はお前達次第だ。」
一方的に告げて歩き出す。
そんな俺に付き従う薫の表情は満足そうだが、
残された3人は険悪な雰囲気を放っていた。
…まあ、それはもうどうでもいいことだ。
五十鈴菜々子達に俺達を攻撃する手段はないからな。
優奈と美春が見守るなかで俺と薫の歩みを止めることはできないだろう。
「全て予想通りだ。」
「結局、恨まれてるけどね~。」
…ああ、そうだな。
だが憎しみさえも生きる糧になる。
それに憎悪から生まれる想いもあるだろう。
前回は兵器という名の悪夢だったが。
今回もそうとは限らない。
「これで良い。」
全ては想定内であり。
ここまでの流れに狂いはなかった。
そして俺にできる全ての役目を終えたのも確かだ。
…残りの課題は宗一郎に任せるしかないな。
娘を失った宗一郎なら家族としての幸せを与えることができるはずだ。
だから本当の意味で五十鈴菜々子に幸福を感じさせる役目は宗一郎にしか出来ないと思う。
…だが、まずは。
五十鈴菜々子がその身に子供を宿すことが先決になるだろう。
「俺の役目は終わりだ。」
「ええ、そうね。」
満足する薫を引き連れて五十鈴菜々子達から離れると。
「ははっ、きみらしい行動だな。」
全てを見届けた黒柳が笑顔を浮かべながら歩み寄ってきた。




