地獄に縛り付ける方法
「私を…殺すのね…っ?」
「死を望んでいたはずだが、今はそのつもりはないのか?」
「私が死ねば彼らも死んでしまうわ。それだけは認められないのよ…っ。」
…なるほどな。
決して殺しはしないが、
念のために確認してみると精一杯の意地を見せて死を否定してくれた。
…その言葉が聞けただけで十分だ。
俺の計画が確実なものになるからな。
「だったら生きてもらうぞ。この世界を地獄と呼ぶお前には…この世界こそが相応しい。」
五十鈴菜々子の身体に触れながら徐々に魔術を展開していく。
その密かな動きに気付いているのはおそらく優奈と美春だけだ。
俺の背後に立つ薫には見えず。
叫ぶだけの男達や少し離れた場所にいる黒柳も気づいていないはず。
その結果として。
すぐ近くで状況を見守る優奈と美春だけが魔術を展開していることに気づいただろう。
さすがに魔術の内容までは理解できないかもしれないが、
俺が何かを仕掛けていることはすでに気がついているはずだ。
…あと少しで測定が終わる。
五十鈴菜々子を地獄に縛り付ける方法が明らかになるはずだった。
…優奈の秘宝に頼ったほうが確実だが。
こういう役目を優奈に押し付けたくはないからな。
…知らないほうが良いこともある。
例え真実を知っているとしても、
聞いた話と見た事実は必ずしも同一ではないからだ。
…優奈は知るべきではない。
少なくとも知ってほしいとは思わない。
…悲しみは少ないほうがいい。
そんなふうに考えながらも魔術による測定を続けていると。
…なるほどな。
…そういうことか。
魔術を通して伝わる感覚が俺の求める情報を教えてくれた。




