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躊躇う理由
「気にするな。」
「…すまない。」
謝罪は必要ないと思っていたのだが、
黒柳は律儀に謝罪してきた。
そしてその行動によって気持ちを切り替えたのだろう。
再びいつものように微笑んでくれた。
「きみが望むのなら案内しよう。」
「ああ、頼む。」
黒柳の案内を受けて研究所を進む。
当然、優奈達も付いてきているのだが、
受付の係員が咎めにくる様子はなかった。
…やはり黒柳を呼んで正解だったな。
これで目的地まで行ければいいのだが、
その前に何も知らない美春が話しかけてきた。
「ねえ、天城君。兵器の研究所って何なの?」
………。
優奈と薫はすでに知っていることだが、
美春はまだ知らないままだ。
黒柳が『その場所』への案内を躊躇う理由を。
その場所に『在る』悪夢を。
美春はまだ知らない。
「行けば分かる。何もかも、な。」
「………?」
曖昧に答える俺を見て追求を諦めた美春だが、
今はあせらなくても理由はすぐに分かることになる。
「とにかくついてこい。」
「あ、うん…。」
まだまだ納得したようには見えないが、
それでも美晴は素直についてきてくれた。




