参加してなかった人達
「…当研究所にどのようなご用件でしょうか?」
優奈達を引き連れながら研究所の内部に戻ってくると、
昨夜の受け付け係とは別の係員が俺達の前に立ちはだかった。
「当研究所は現在、部外者の立ち入りを固くお断りしていますので、まずは御用件とお名前をお聞かせください。」
………。
昨夜ほどの警戒はされていないようだが、
明らかに俺達を不振に思っている態度が見てとれる。
そんな敵意を込めた瞳を見る限り、
今回も黙って通してくれそうにはなかった。
「…ちょっと嫌な雰囲気よね。」
「…ですよね。」
「う~ん…。あのさ、兄貴。」
不穏な空気を感じとる美春と優奈が困った表情で囁き合う最中に薫が話しかけてきた。
「多分だけど現時点で研究所にいる人達って基本的に戦争に参加してなかった人達だと思うのよね~。だから私や鈴置さんが名乗り出ても理解してもらえないと思うし、兄貴達も名乗れないわけで、まともに話し合うのは無理じゃないかな~なんて思うんだけど…。」
「だったらどうする?力付くで押し通るか?」
「…いやいやいやいや。そうじゃなくて兄貴なら知り合いを呼び出せるから、こっちから向かうんじゃなくて、向こうから来てもらったほうが良いんじゃない?っていう話よ。」
…ああ、なるほどな。
昨夜ならともかく。
今なら協力者がいるから知り合いを呼び出すのは簡単だ。
「無理に進もうとせずに、待ち合わせということにすれば穏便にすませられるんじゃない?」
…かもしれないな。
「と言うことで、ちょっと下がりましょ。」
話を終えた薫は俺の返事を待つこともせずに、行く手を阻む係員に歩み寄っていった。
「ごめんね。ちょっと知り合いを待ってるだけだから気にしないで。」
「…そうですか。」
大人しく謝罪した薫の行動に対して気を許したわけではないだろうが、
無理に進むつもりがないのは理解してもらえたようだな。
係員は一度だけため息をはいてから本来いるべき受付へと戻っていった。




