見届け人として
「元気そうだな。」
「お互いにね。」
…ああ、そうだな。
笑顔で接してくれる竜崎慶太からは、
極力揉めないように気を遣ってくれているのが感じられる。
そしてそれは竜崎雪も同様で、
優奈と親睦を深めながら楽しそうに会話をしていた。
そんな二人の姿を微笑ましく思いながらも、
まずは竜崎に今後の方針を伝えることにした。
「最初に言っておくが、御堂の試験は午後4時からになるそうだ。」
「ふーん。4時か…。だったら僕達の出番はまだ先のようだね。」
…ああ、そうだな。
「だが、その前に一戦交えることになるらしいな。」
「そうみたいだね。淳弥からその辺りの事情は聞いてるけど、僕達が参加してもいいのかい?」
「俺の計画に関しては問題ない。竜崎達にしても問題ないだろうが、その辺りに関して困る人間がいるとすれば長野敦也だけだろうな。」
「あはははっ。まあ、そうだろうね。もう結果が見えているだけに始まる前から同情しか感じないよ。」
「それでも参加するつもりなのか?」
「僕は見届け人として最後まで観戦させてもらうよ。まあ、約一名だけどうしようもないほど乗り気なんだけどね。」
…だろうな。
さりげなく哀れみの想いを込めながら隣に視線を向ける竜崎の傍には護衛に徹する長野沙弥香がいる。
「どうやら沙弥香は全力で参加するつもりらしいよ。」
ため息交じりに告げる竜崎の隣で、
長野沙弥香は微笑みを見せていた。
…やはり長野敦也の予想通り、行動不能になる運命は避けられそうにないな。
全力出す姉に弟が勝てる可能性はおそらく『0%』だ。
そしてそのことを分かっていながらも、
長野沙弥香は一切手加減しないだろう。
…まあ、どういう結果にしても竜崎雪がいれば死ぬことはないだろうな。
命の保証はされている。
だからこそ余計に瀕死の状況に追い込まれるのは目に見えているのだが、
その明らかな運命を覆すのは難しそうだった。
…やはり祈るしかないか。
長野敦也の不運に関しては祈る他に方法がない。
やる気満々の姉に対して弟がどこまで抵抗できるのか?
…そこが本当の試練だろうな。
それに、だ。
そもそも本気で俺に挑むつもりなら最低限その程度の気概は見せてもらわなければ話にならない。
…二人の試合は最後まで観戦させてもらおう。
直接的には無理でも秘宝を使えばいつでも見れるはずだからな。
「どういう結果になるかは知らないが、俺も観戦だけはさせてもらうつもりだ。」
「…あ、ははははっ…。」
乾いた声で笑う竜崎は諦めの心境を露骨に示していた。
「ま、まあそういうわけだから、僕達はもう一度敦也に挨拶に行ってくるよ。」
話を終えた竜崎が歩き出す。
「それじゃあ、またあとで。」
絶望に沈んでいるであろう長野敦也に会いに、
竜崎は妹と長野沙弥香を引き連れながら俺達の前から去っていった。




