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最強の密偵
「優奈。」
「…うぅ。すみません。道案内に失敗しました。」
話し合う覚悟を決めて優奈に呼び掛けてみると、
どうやら優奈も接近してくる人物に気付いていた様子だった。
「何度か回避しようとしたんですけど…。」
道を変えた程度で回避は無理だろうな。
「向こうはすでに俺達の位置を特定しているようだ。」
「…ですよね。やっぱり私のせいでしょうか?」
…いや。
優奈は落ち込んでしまったが、
これは誰のせいでもない。
「俺達がどう動いたとしても確実に気付かれたはずだ。」
「…やっぱり、あの人はすごいですよね。」
「それが仕事だからな。」
「…あ、はい。そうでしたね。」
まもなく姿を見せる接近者の苦労を思って小さくため息を吐く。
そんな優奈と共に足を止めていると。
「やっと…やっと会えたな。天城総魔!!」
ジェノス魔導学園に潜む最強の密偵が俺達の道を阻んだ。




