無い物ねだり
「鈴置君の望むべき道と現在の実力。それらを考えてみると、どう考えても現在の学園では試験の判定が出来ないのだ。なぜならこの学園において彼女の他に魔法を使える者が存在せず、なおかつ彼女に医療を教えてきた医師達が戦争で全滅したことで彼女の実力を判断できる者もいないのだからな。」
…ああ、なるほどな。
美春の力である魔法と医師としての医術。
それらを測定できる教師がこの学園にはいないらしい。
それが美春の試験を手間取らせている理由のようだった。
「神崎慶一郎が生きていれば良かったのだがな…。あるいはきみが参加できれば…と、まあ無い物ねだりで困っているわけだ。」
「どうするつもりだ?」
「本来こういう手段は試験の規定外なのだが、今回は芹澤君達『特風』の生徒にも協力してもらおうと考えている。彼女達ならば医療の心得もあり、戦力としても申し分ないからな。ただ彼女達の都合もあるだろうから。少し時間をおいて午後2時頃に試験を行うという話になったのだ。」
…なるほど。
「教師の代わりに生徒を使うというわけか。」
「情けない話だが、彼女だけは特別なのだ。」
…まあ、それは仕方がないだろうな。
卒業試験として正当な判断が出来る人材がいないからといって試験そのものを中止にするわけにはいかないからだ。
例え現状が戦後で深刻な人手不足であったとしても、
それが生徒の卒業を認めない理由にはならない。
よほどの理由がない限りは最善の準備を整えて試験を受けさせるしかないだろう。
「美春に関してはそれしか方法がないとしても、長野敦也はどうすりつもりだ?御堂に関しては準備を進めているが、長野敦也の実力を測定できる教師もいないはずだ。」
「ははっ。確かに彼に関しても学園ではどうしようもないな。」
美春と同様に試験判定が出来ないことで長野敦也に関しても試験は不可能だと言い切っていた。
「だからこそ彼等の手を借りようと考えているのだ。」
事実を認めたあとで、
宗一郎は特風ではない別の戦力に頼ると宣言していた。




