兄貴の計画なの?
「おそらくそうだろうとは思っていたが、やはりきみ達はすでに全てを知っているようだな。」
単なる推測だった考えを確信した宗一郎は、
余計な会話を省いて一連の流れを話し始めた。
「すでに知っていると思うが、御堂君と共に長野敦也君と鈴置美春君。そして森下千夏君の3名が本日中に試験を行う予定になっている。」
「…あ~、鈴置さんもなのね。」
すでにその事実を知っている俺と優奈は驚かなかったが、
まだ詳細を知らなかった薫は美春の情報を得たことで俺に問いかけてきた。
「これも兄貴の計画なの?」
「いや、それは美春が判断することだ。」
美春を仲間に率いれるための計画かどうか?
その確認は即座に否定しておいた。
「すでに分かっていると思うが、そもそもの前提として俺は誰も巻き込むつもりはない。薫や優奈がどういう道を選ぼうと否定するつもりはないが、美春に関しても自分の意思で選ばせるつもりでいる。」
「それって…仲間に引き込む気はないけど、着いてくるなら拒絶もしないってことよね?」
「拒絶して諦めてくれるのならそうする。」
「「………。」」
俺の考えを聞いて、
二人は黙り込んでしまった。
その様子を見れば薫にしても優奈にしても何かしら思うことがあるのは分かる。
おそらく俺に置き去りにされる状況が受け入れられないのだろう。
だからこそあえて拒絶するつもりはなかったのだが、
置き去りにして素直に諦めてくれるのなら俺はすでにそうしていた。
俺自身の目的のために二人の協力が必要かどうかに関係なく。
二人を安全な場所に避難させていただろう。
だが薫も優奈もそんな人生を求めていないのは間違いない。
自分達の幸せよりも俺と共に闇の世界を歩む覚悟を決めてくれているからだ。
そんな二人を置き去りにしても意味はなく、
確実に俺を追いかけてくるのは目に見えている。
そう思うからこそ美春も置き去りにすることは不可能だと考えていた。
「美春も置き去りにするのは難しい。下手に突き放せば単独で闇の世界に足を踏み込みかねないからな。」
遠く離れた場所で危険な思いをさせるくらいなら共に行動させて安全を確保したほうが良い。
「実際にどういう決断を下すのかはまだわからないが、美春が望むのなら俺達の旅に同行させるつもりでいる。それが最も安全な方法だからな。」
「ん~、まあね~。確かに兄貴の傍にいるのが一番安全よね。最終的な結果は別として…だけど。」
…ああ。
竜導寺清隆との決戦だけは俺の傍にいることが最も危険な選択肢になるだろう。
「でもまあ…仕方がないのかな?」
不安を感じる様子の薫だが、
自分も同じ道を選んでいるということもあって美春の決断を否定することは出来ないようだな。
「出来ることなら鈴置さんには表の世界で、ちゃんと医師として生きていてほしかったんだけどね~。」
………。
「「………。」」
ささやかな願いを言葉にする薫だが、
おそらくその想いは優奈も宗一郎も薫に対して感じているはずだ。
「あまり人のことを言える立場ではないが、今の発言と同じことをきみに対して感じている者達が数多くいると思うぞ?」
「…あぅ。」
宗一郎の指摘を受けた薫は言葉を詰まらせていた。
「わ、私も人のことを言える立場ではありませんので…。」
そして優奈自身も苦笑いを浮かべながら話題に触れることを避けていた。




