監視されている
………。
校舎の内部に侵入してからすぐに、
とある人物の視線を感じて歩みを止めることにした。
「やはり…と、言うべきか。」
「え?どうかされましたか?」
………。
優奈はまだ気づいていないらしい。
キョロキョロと周囲を見回してから振り返った優奈は、
小さく首をかしげながら俺を見上げている。
…気付かなくても仕方がないか。
今は魔力による探知能力が停止しているからな。
本来の魔力の波動を別の波動に変換しているせいで、
今の優奈は魔術や探知能力を使用できない状態になっている。
そのおかげであらゆる魔術が貫通してしまうわけだが、
同時に御堂達の魔力探知にひっかからないという状態でもあった。
…今の優奈では無理だろうな。
決して優奈自身の問題ではなくて俺が発動している魔術の影響なのだが、
探知が出来ない優奈は俺達が監視されていることに気づいていない様子だった。
「何かあったんですか?」
「…ああ。」
何も気づけずにいる優奈に説明するのは簡単だが。
…まずは監視者と話し合うべきだな。
優奈への説明はいつでも出来るが、監視者とは今しか話せない。
…早めに手をうっておくべきだろう。
放っておいても害はないと思うが、
後々もめる要因になりかねないからな。
早急に話し合っておいたほうがいい。
「説明はあとでする。それよりも今は先導を頼む。」
「あ、はい、分かりました。安全な道を探しながら先へ進みますね。」
「ああ、頼む。」
理事長室までの道案内は優奈に任せることにして、
まずは離れた場所にいる監視者に話しかけることにした。




