着替えない
…こうなると俺も制服に着替えるべきか?
学園で行動する以上、
優奈と同様に学園の制服に着替えたほうが色々と行動しやすいかもしれない。
…だが。
すぐにその必要はないと思ってしまった。
…何もかも過去に合わせるのではなくて、今は未来への道筋を示すべきだろう。
学園の制服を着て御堂との決戦を迎えるのも良いが、
それぞれの想いを示して異なる服を着ることにも意味はあると思う。
…せっかく薫が用意してくれた服だからな。
…いまさら制服に着替え直す必要はないだろう。
すでに役目を終えたとは言え、
戦場に向かう俺のために薫が用意してくれた漆黒の服は今でも俺の身を守り続けてくれている。
…それもそろそろ限界が近いが。
戦闘で傷付いた破れや綻びは優奈が直してくれているものの。
薄汚れた生地は全体的に限界が近づいていた。
…だからこそ優奈や御堂と共に戦場を駆け抜けた思い出もある服だ。
この服もあまり長くは着続けられないだろう。
おそらく今日が最後になる。
御堂との決戦を終える頃には完全に着用不可能になるはずだ。
…それでも御堂と決着をつけるためにはこのままで良い。
学生としての決着ではなく、
戦士としての決着だからな。
そう考えれば今のままで良いと思う。
…俺と御堂の戦いは学園の1位を争うことではなくて、魔術師としての頂点を賭けた戦闘だ。
どちらが上を行くのか?
その答えを示すために着替えないことを選択する。
…俺はこのままで良い。
そんなふうに決断してから、
正面の席に座る黒柳に向き合うことにした。




