学生生活最後の
…薫。
…忙しいところを悪いが、例の伝言を伝えて宗一郎を動かしてくれないか?
『ん?あ~、もう良いの?』
…ああ。
『お~け~。任せておいて!』
最後の計画を進行させるためにジェノスの町を移動中の薫に話し掛けてみたことで、
薫はすぐに返事をくれた。
『その程度の雑用ならお安いご用よ。ただまあ私が動き出さなくても勝手に話は進むと思うけどね~。』
…そうなのか?
『ええ。すでにウィッチクイーンが手回ししてるらしいわよ。長野君を経由してさりげなく御堂君に例の話を進言させてるみたいね。』
…ああ、なるほど。
…それなら話が早いな。
『でしょっ。まあ、私からも米倉元代表には話をしておくけど。上手くいけば御堂君から先にあの話を切り出すんじゃないかしら?』
…そうか。
…それならそれで良い。
『うん。それでも一応、米倉元代表には伝言を伝えておくわね。だけどまあ米倉元代表にしてもすでにその辺りのことは考えてるみたいよ。』
…それは誰からの情報だ?
『誰って…琴平学園長よ。米倉元代表の考えをちらっと聞いたみたい。仮にも共和国の代表を務めるのならその程度の段取りは必要だろうっていう話らしいわよ。』
…なるほどな。
やはり宗一郎は有能だった。
俺の期待通りに動いてくれている
『まあそれが良いかどうかは知らないけど、最終的に判断するのは御堂君自身だしね~。周りがどう動こうと御堂君の気持ちが動かないことには意味がないんじゃない?』
…いや、それこそ心配無用だろう。
いつまでも学園に留まる理由はないだろうからな。
『まあね~。魔術大会での年間制覇も達成したし。魔術師としての最強の称号も一応手に入れてるわけだし。そうなると次は…ってなるのも当然でしょうけどね~。』
…ああ、そうでなければ俺が動く意味がない。
『学生生活最後のけじめだとすれば…ある意味、魔術大会での年間制覇以上に最高の思い出になるんじゃない?』
そうしてみせる。
…それが俺達のけじめの付け方だからな。
『うん。良いと思うわよ。そういうやり方もありだと思うわ。だからあとのことは私に任せておいて!兄貴の期待に応えられるようにちゃんと話を進めるから。』
…ああ、迷惑をかけるが頼む。
『任せてっ!!』
俺の期待に応えるために元気一杯に役目を請け負う薫。
その心遣いに感謝しながらも再びジェノス全体の探査を行ってみると。
「御堂達が帰還したな。」
御堂の乗る学園の馬車がついに校門を通り過ぎた。




