魅力的
黒柳との話し合いが始まってから1時間ほどが過ぎた午前7時頃。
夢を操作する魔術に関する話からそれぞれの想い出を強制的に引き出す技法についての質問が始まった時に、
御堂達の乗り込む馬車がジェノスの町の北部に到達したのを感じとった。
「…御堂達がジェノスに入った。近藤誠治もそうだが、他の連中も全員揃っているようだな。」
芹澤里沙や矢野百花も長野淳弥や和泉由香里も鈴置美春の魔力の波動も確認できる。
「ひとまずこれで俺の計画が進行できるようになった。」
「ははっ。まあ、肝心の御堂君がいなくてはきみの計画は台なしだからな。」
…ああ、御堂がいなければここへ来た意味がない。
「これからすぐに行くのか?」
「いや…。もう少し準備が整ってからだ。」
「…そういえば幾つか手をうっているようなことを言っていたな。他にも誰かを待っているのか?」
「優奈と薫には集合するように伝えてある。それと竜崎達も応援に駆け付けるはずだ。」
「ほう、それはまた贅沢な話だな。竜崎慶太はもちろんとしてウィッチクイーンまでいるとなれば学園の関係者としては大いに安心できる話だ。」
「手を貸してくれるかどうかは別問題だがな。」
「それはもちろん期待できるだろう。きみの計画を実現するためならば協力を惜しむ者などいないはずだ。それほどにきみの計画は魅力的な話なのだからな。」
「魅力的かどうかは知らないが、期待に応えられる結果は出すつもりだ。」
「はははっ!今はその言葉だけで十分だ。その言葉さえ聞ければきみに手を貸す価値は十分にある。」
「…そうか。」
笑顔で期待をあらわにする黒柳を見て微笑んだところで。
『総魔さん』
数時間ぶりに優奈の声が聞こえてきた。




