4時間
特風会から撤退して20分ほど経過した頃に、
黒柳の案内を受けた俺は所長室の隣に隣接する休憩室へと案内された。
「この部屋は西園寺君がこまめに手入れをしてくれているからな。ここならきみもゆっくりと休めるだろう。」
…ああ、十分だ。
決して広くはないものの。
全体的に掃除が行き届いているのが分かる。
どこを見ても清潔感に満ち溢れている休憩室は、
黒柳が常駐している所長室と比べれば確かに居心地の良い部屋だった。
「ここが西園寺つばめの管理している部屋なら、ここを使うための許可がいるんじゃないか?」
「ははっ!その心配はない。ここは俺や西園寺君や藤沢君を含めたルーン研究所の幹部連中が休憩用として使っている場所だからな。西園寺君の許可などもらわなくとも自由に使うことが出来るようになっている。ただ西園寺君の性格上、清潔にしておかなければ気が済まないというだけだ。」
「…そのおかげで掃除が行き届いているということか。」
「まあ、そうなるな。だからここは西園寺君の部屋というわけではない。今は西園寺君が管理しているだけの休憩室であって、きみが気を遣う必要はないし、気兼ねなくゆっくりしてくれればいい。」
…そうか。
「それならいいんだ。」
「ああ、楽にしていてくれ。実験結果に関しては少し体を休めてから話し合おう。」
「ああ、分かった。」
「うむ、ゆっくりしてくれ。ひとまず俺は俺の仕事を片付けてくるからその間は自由にしてくれればいい。」
「その仕事はどの程度で終えられる予定なんだ?」
「うーむ。そうだな…。ひとまず魔石の調整と各部署への説明に1時間はかかるだろう。それから検定会場の封鎖手続きと実験機材の運搬や職員への指示を考えると…早くても4時間はかかるかもしれないな。」
…4時間か。
「他に何か急ぎの用事でもあるのか?」
「いや、今はない。」
4時間程度なら特に問題はないはずだ。
「そうか、そう言ってもらえると助かる。出来るだけ早く片付けてくるからゆっくりと休んでいてくれ。」
「ああ、すまない。感謝する。」
研究所の所長としても。
研究者の一人としても。
熱心に職務を全うする真面目な仕事ぶりをまっすぐに見つめていると。
「はははっ、気にするな。雑用は全て任せておけ。それが俺の役割でもあるからな。しばらくここで待っていてくれ。」
黒柳は俺に対して軽く微笑んでから休憩室を出て行った。




