太陽の巫女
生徒指導室を塞ぐ鋼鉄の扉が複数の魔術の攻撃に耐え切れずに吹き飛んだ。
「駆け抜けろーーっ!!!」
大きく開かれた出入口から数十名の生徒達が飛び出してくる。
「敵は一人だ!全員で襲い掛かれーっ!!」
扉を破壊した直後に一斉に攻撃魔術を展開する生徒達。
ホンの数メートル先の近距離から次々と放たれる魔術の種類は大小様々だが、
そのどれもが他の魔術に干渉しないように計算されていて上手く連携がとれていた。
…これは予想外だな。
協調性など存在しない集団だと思っていたのだが、
どうやらそうではないようだ。
「良い魔術構成だ。」
他人と協力しあうことを考えずに自分の好きなように行動する暴徒だと思っていたのだが、
現時点ではそうではないように思える。
突撃開始から僅か数秒で俺を捕らえて先制攻撃を仕掛けてきた生徒達の判断力は良い意味で評価出来た。
…だが、それだけだ。
例えどれほど上手く連携がとれているとしても、
目の前の相手の実力を把握できないようでは何の意味もなさないからな。
「攻撃自体は悪くない。だが、その先が見えていない。」
降り注ぐ魔術に対して回避も防御も必要なかった。
わざわざ迎撃しなくてもこの程度の攻撃では俺には通じないからだ。
「…お前達は女神の加護を信じるか?」
最初から返事は期待していないが、
それでも一つだけ問い掛けてみる。
「お前達にとっては不満ばかりの世界かもしれないが、希望を信じる者達の力を見せてやろう。」
コンマ数秒の間に発現する強力な光。
その光は俺の意志に応じて急速に輝きを増して、純白の翼へと形を変えていく。
「良く見ておけ。そして自らの体で感じ取れ。これが…世界を変える力だ。」
一歩も動くことなく光の翼を広げて降り注ぐ全ての魔術を瞬時に掻き消す。
そして。
「女神降臨《太陽の巫女》!!」
神秘的な陽の光を放つ究極の精霊を召喚した。




