夢
西園寺つばめと藤沢瑠美が所長室から去り、
黒柳と二人きりになったことで俺も席を立って校舎に向かうことにした。
「俺も一足先に行かせてもらう。」
「一人で大丈夫か?何なら護衛を用意するが…。」
「いや、必要ない。」
相手が御堂やフェイならともかく、
学園に閉じ込められているような生徒なら大した問題じゃないからな。
俺一人で十分だ。
「30分もあれば制圧できる。」
「そうか、それなら良いんだが…。行く前に一つだけ聞いても良いか?」
「ああ。」
「きみがこれからしようと考えている魔術。その名前だけでも教えてくれないか?」
…魔術名か。
確かに名前さえ分かれば最低限の推測は出来るだろう。
…どうする?
現時点では特に名前は決めていなかったのだが。
それでもあえて名前を付けるとすれば?
考えられる候補は一つしかないだろうか。
「ドリームだな。」
「ははっ。やはり夢か。何となくだが、きみならそう答えるのではないかという気がしていたのだが、どうやら俺の予想は当たっていたようだな。具体的な詳細に関しては後ほど聞かせてもらうとして、今は名前が聞けただけで十分だ。まずはきみの起こす奇跡を俺も最後まで見届けさせてもらおう。」
「…すまないな。」
「いやいや、気にするな。本来ならすぐにでもきみの期待に応えたいところなのだが、そうも出来ずにまたきみに手を借りる形になってしまったのだ。少なからずこちらにも落ち度はある。わざわざ俺を頼ってくれたきみに雑務を頼むのは少し気が引けるが、その分はこれからの準備でしっかりと借りを返させてもらうつもりだ。」
「ああ、感謝している。」
「ははっ、気にするなと言っただろう?きみが望む段取りは全て整えておく。それだけは安心してくれ。」
「頼む。」
「うむ。それではまたあとで会おう。」
「そうだな。特風会で合流しよう。」
「うむ。」
短い打ち合わせを終えたことで深く頷いた黒柳は、
ひとまず満足そうに微笑んでくれていた。
「指導室を頼む。」
「問題ない。すぐに片付ける。」
黒柳の笑顔を確認してから背中を向ける。
そして全ての準備を任せてから校舎に向かうことにした。




