対立の理由
「さて、それではきみの話を聞かせてもらおうか。」
「ああ。」
この場を仕切るために率先して話を切り出す黒柳の言葉をきっかけとして僅かに張り詰めた空気が漂い始めたが、
これでようやく本題に話を進めることが出来るようになったとも言える。
…ひとまず順番に説明するべきか。
色々と話し合うことはあると思うが、
黒柳達の疑問を解決するために順を追って説明することにした。
「まず最初に俺が生存している理由に関してだが、一言で言えば竜崎慶太がアストリアからの脱出に協力してくれたからだ。」
「ほう、竜崎慶太か…。どういう事情で動いていたのかは知らないが、彼もアストリアにいたのか?」
「ああ、俺の行動に関して調査をしていたらしい。」
「きみの?」
…ああ、そうだ。
「何故、竜の牙である竜崎慶太がきみの調査を?」
………。
どうやら黒柳は俺と竜崎慶太との接点を知らないようだな。
宗一郎から何も聞いていないのか、
まだ何も知らない様子の黒柳は俺の家系や秘宝に関する情報を持っていない様子だった。
「竜の牙との関係は米倉宗一郎から聞けば良い。必要な情報を話してくれるはずだ。」
「宗一郎さんが?」
「俺の父に関わる話だからな。」
「…ほう。なにやら複雑な事情があるようだな。」
「俺と竜崎に直接的な繋がりはないが、とあるモノを中心として俺の父と宗一郎と竜の牙は一つに繋がっているらしい。」
「あるモノだと?竜の牙が関わり、宗一郎さんも関わるモノと言えば…。」
ごく僅かな情報を基にして思考を巡らせている。
今は何も知らない黒柳だが、
幾つかの情報を与えればすぐに答えにたどり着くだろう。
「竜の牙と共和国が対立していた理由を考えれば、その答えはすぐに思い付くはずだ。」
「対立の理由…?まっ…まさか…っ!?やはりアレは実在していたのか!?」
最後の一押しとして告げた言葉をきっかけとして黒柳も真相にたどり着いたようだ。
そしてやはりと言った以上、
黒柳も幾度も共和国に進攻してきた竜の牙と同様に宗一郎が秘宝を所持しているという可能性を考えていたようだった。
「宗一郎さんは否定していたが…やはりアレは実在するのか?」
「ああ、ソレは実在している。俺の父から宗一郎に渡ったモノが俺の手元にあるかどうか?その真偽を見極めるために俺の調査をしていたようだ。」
「…なるほどな。そういう理由から彼はきみを追跡していたのか。」
「ああ、だが俺はそれを所持していなかった。」
その時点では俺もそういうモノの存在を知らなかったからな。
「だが結果的に彼が近くにいたことによって、きみはアストリア王国から離脱することができたのだな?」
「ああ、そういうことだ。」
「そうか。そういう事情があるのなら、きみが生存していた理由は納得できる。だが、いまひとつ理解できないこともある。」
「何だ?」
「今までどこで何をしていたのか、ということだ。生きていたのなら何故今まで帰ってこなかったのだ?アストリア王国が消失したあとも戦争が続いていたにも関わらず、きみは御堂君の前に現れなかった。その理由が何なのかを聞きたい。」
…俺が帰ってこなかった理由か。
具体的な事情を説明すると長くなるが、
簡潔に言えば一言ですむ。
「今まで瀕死の状態だったからだ。」
はっきり言えばそれだけの理由でしかないのだが、
戦争に参加しなかった理由を知りたいと願う黒柳に詳細も答えることにした。




