ご用件
「申し訳ありませんが、お待ちいただけますでしょうか?」
………。
「このようなお時間にどういったご用件でしょうか?」
声をかけてきた係員にゆっくりと振り返ってみると。
係員は俺を不審者と判断したのか、
足速に俺の行く手を遮ってきた。
「ただいま当研究所は学園の復旧作業のために非常に忙しい状況です。許可のない方の立ち入りは固く禁じられています。」
…許可か。
「特に許可を得ているわけではないが、ルーン研究所にいる黒柳大悟に会いたい。」
「………。許可がないのでしたらここから先はお通し出来ません。特に黒柳所長は学園の復旧作業に関わる全権を任されているお立場ですので、どういったご用件かも分からない方をお通しするわけにはいきません。」
「なら、どうすれば良い?」
「黒柳所長に連絡をとって許可を得たうえで日を改めて出直してください」
「残念だが、その時間はないな。」
「ではどういったご用件かをお聞かせください。こちらから係の者を派遣して面会の許可が出ましたらお通しさせていただきます。」
「…説明か。それは黒柳大悟に直接話すべきことであって、ここで語る必要はない。」
「…でしたら許可は出せません。今日のところはお引き取りください。」
………。
自分の役割を果たすために俺の行く手を阻む係員の仕事熱心な態度は良い心掛けだと思うが、
俺にも事情というものがあるからな。
今回は大人しく退くつもりはない。
「悪いが急いでいるんだ。邪魔をするのなら力付くで通る。」
「っ!?不審者の侵入を発見っ!!直ちに戦闘配備っ!!!」
睡眠の魔術を展開しながら右手を突き出したことで、
問答無用で仲間を呼ばれてしまった。




