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THE WORLD  作者: SEASONS
5月14日
4458/4820

両方という可能性

「それほど急ぐ調査ではないが、例の魔女達がどうしているかは把握できるか?」


「あ、はい。それならすでに調査済みです。」



魔術大会で御堂に敗れてから突如として失踪した魔女達が今はどこでどうしているのか?



その追跡調査を頼んでみたのだが、

優奈はすでに魔女達に関する情報を集めてくれていたようだった。



「冬月彩花さんと文塚乃絵瑠さんを含む6名の方々は全員グランバニアを離れていて、現在はカリーナに向かっているようです。」


「学園に帰るつもりなのか?」


「一応そのつもりのようです。ただ、冬月さんは学園に戻るというよりも学園を去るつもりで行動しているようですね。」



…ああ、なるほどな。



「やはり共和国を去って、新たな戦場に向かうつもりか。」


「はい。冬月さんはそう考えているみたいです。ただ、その旅立ちに同行する意志を示している文塚乃絵瑠さんの提案によって学園を卒業してから旅に出ようという話になっています。」



…卒業か。



「カリーナの卒業試験に関しては何も知らないが、ジェノスと同様なのか?」


「あ、はい。おそらくそうだと思います。ただ、卒業試験を認定する役目を担う桜井由美理事長が亡くなられていることで、どういった試験が行われるのかは不明のようですね。それでも10名の試験官から卒業資格を得るという内容は変わらないようですけど。」



…だとすれば。



「どういう方法で卒業資格を得るかは魔女達次第ということか。」


「そうですね。」


「あの魔女達ならいまさら卒業試験程度で足を止めることはないだろう。おそらくは俺達の計画と並行して魔女達の卒業も確定するはずだ。」


「カリーナを出たあとにどうするかまでは話題に出ていませんけど。冬月さん達はどうされるのでしょうか?」



…魔女達の今後か。



どういう過程での成長を望むのかまでは推測のしようがないものの。



「最終的な目的がウィッチクイーンの撃破である以上は、この大陸から出るということはないだろう。」


「…と言うことは、大陸の中部や北部に旅立つ…ということでしょうか?」



おそらくそうなるだろうな。



「最も確率の高い選択肢として大陸の中部で暗躍している解放軍との争いに身を投じる可能性が考えられるだろう。」


「…だとすると。南部で暗躍していた竜の牙と同様に武力で各国に戦いを挑んでいる闇の一党に戦いを挑むということでしょうか?」



…かもしれないな。



ウィッチクイーンに匹敵するほどの実力者との対立を目指すのなら、その可能性は高いだろう。



「あるいはもう一つの可能性として大陸北部で暗躍している光の剣に戦いを挑むことも考えられるが、どちらに向かうかまでは分からないとしか言いようがないな。」


「何となくですけど、両方という可能性も考えられますよね?」



…そうだな。



冬月彩花なら有り得るかもしれないが、

どちらにしても大陸南部から姿を消すことに変わりはない。



「今後の予定として竜道寺清隆を追って俺達も大陸の南部から旅立つことを考えれば、いずれどこかの国で再会する可能性が十分にあるだろう。」


「その時にはお互いに協力しあえるでしょうか?」


「それは状況次第としか言いようがないが、薫の努力次第で一時的に協力しあえる可能性はあるはずだ。」


「あっ、そうですよね。栗原さんは冬月さんも味方にしたかったみたいですから。」



薫は薫なりに今後のことを考えているようだからな。



「必要な戦力を集めることで少しでも危険を減らそうとしているのかもしれないな。」


「はい。私もそう思います。」


「ああ、魔女達との今後の関係はひとまず薫次第だが、その辺りに関してはその時に考えれば良い。」


「そうですね。解放軍との戦いに関わるのなら私達と目的は同じですし、その時に考えても遅くはないですよね。」


「ああ、魔女達が大陸の南部から旅立つということさえ分かれば今はそれでいい。」


「あ、はい。それと一応、矢島美咲さんに関しても調査しておいたんですけど…。」


「何か分かったのか?」


「いえ…。上手く姿を隠しているみたいで矢島美咲さん本人はなかなか捜索出来ませんでした。ですが文塚乃絵瑠さんを経由することで少しだけ情報が得られました。」


「何が分かった?」


「矢島美咲さんと文塚乃絵瑠さんの合流地点です。ミッドガルムとアルバニアの国境の北部に広がる山岳地帯の奥深くに竜の牙の砦があるようなんですけど、そこで落ち合うという話になっているそうです。」



…なるほどな。


…竜の牙の砦か。



「矢島美咲さんは竜崎さんやクイーンさんとも合流するつもりなのでしょうか?」



…いや。



「おそらくは冬月彩花に対する配慮だろう。大陸の南部から旅立つ前に長野紗耶香に合わせようという考えかもしれないな。」


「あ~、なるほど。確かにそうかもしれませんね。」


「矢島美咲は文塚乃絵瑠と共に行動するつもりなのか?」


「一応そういう話になっているようです。」



…そうか。



「だったら魔女達に関しては無理に干渉する必要はないだろうな。」


「矢島美咲さんがいるなら安心ですよね。」



…ああ、現時点で俺や優奈に匹敵する唯一の魔術師だからな。



「矢島美咲が同行するのなら俺達が心配する必要はない。」


「私達とは別行動ですけど、強力な味方がいてくれるのは心強いですね。」



…そうだな。



「いずれは戦力の一端として手を借りることになるかもしれないからな。」


「冬月さんはクイーンさんを越えられるでしょうか?」



…不可能ではないだろう。



「憶測だけで判断するつもりはないが、そこまで成長してほしいと思う期待はある。」


「御堂先輩のために…ですか?」



…いや。



「この世界のために、だ。」


「…ということは、冬月さんもこの世界の安定にとって必要な人材だと考えているのですか?」


「必要悪という言葉が現実に有り得るとすれば、俺や冬月彩花は明らかにそこに属する存在だからな。だからこそ闇の世界に身を投じることが出来ている。」


「そ、それは…はい。」


「御堂がこの世界を光に導くためには裏側で暗部を担う者が必要になる。その暗部の一端として冬月彩花が有能な人材なのは間違いない。」


「それは分かりますけど、冬月さんは共和国のために動いてくれるでしょうか?」



女王としての名声を轟かせるだけでも各国への牽制としての価値はあるだろう。



「長野紗耶香を越えるほどの力を示して、世界に対立する意志を示せば世界の脅威として間接的に共和国を守る力になるはずだ。」


「でも…それだと冬月さんをきっかけとして戦争が起きる可能性もありますよね?」


「その暴走を止めるために文塚乃絵瑠や矢島美咲がいると考えれば良い。」


「ああ、なるほど。」


「冬月彩花は『ある意味』では俺と同じように中立の立場だからな。」



どこにも属さずに自らの意志でのみ行動する限り完全な悪にはなりえない。


少なくとも魔女達には独占欲や支配欲はないからな。



「あくまでも力の向上だけを目指す限り、そこまで危険な存在にはならないはずだ。」


「お互いの立場は違っても目的は同じということですよね。」



…ああ、そうだ。



「冬月彩花の力は確かな闇だが、心までは闇に堕ちない。そう思えるからこそ、これから先に何があろうとも決して力に溺れるような愚かな結末には至らないだろうと信じている。」


「総魔さんにそこまで言ってもらえるってすごいですよね。」



俺の評価にどれほどの価値があるかは知らないが、

冬月彩花の成長は俺にも予測できないからな。



今回の大会では辛うじて御堂が勝ったが、

もしもまともに戦っていたら御堂は手も足も出せずに負けていただろう。



「今回の試合で御堂が勝てたのは冬月彩花が手加減をしていたからだ。もしも最初から殺すつもりで戦っていれば御堂は確実に負けていただろうからな。」


「そう…ですよね…。」


「冬月彩花の実力はすでに御堂を越えている。その事実だけは認める必要がある。」


「結局…御堂先輩はラグナロクに覚醒しませんでしたしね…。」


「そこに関してはまだ幾つか手立てを考えているが、現在の御堂では冬月彩花には届かない。それが事実だ。」


「御堂先輩はラグナロクを取り戻せるでしょうか?」


「あと一押しすれば何とかなると思う。」


「どうするんですか?」


「それはジェノスに着いてからの話だな。今ここで説明しても実行できなければ意味がない。」


「あ…はい、そうですか…。」



俺が説明を断ったことで少し落ち込んだ様子の優奈だが、

ジェノスに着けば全てが明らかになるということもあって

すぐに気持ちを切り替えてから再び俺に視線を向けてきた。



「その…。とりあえず冬月さん達は今もカリーナに向かってる途中でした。徒歩で向かっているので、到着予定時刻は日付が変わってからまだしばらくしてからだと思いますけど。」



…そうか。



「それなら魔女達に関してはカリーナを旅立ってから改めて報告を聞かせてくれ。」


「はいっ。分かりました。」



俺の指示を快く引き受けて、

ひとまず魔女達に関する調査を終えた優奈だったが。



「それと幾つか調べ終えた調査に関する報告を伝えておきますね。」



ついでに他の調査報告も聞かせてくれるようだった。



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