Epilogue鈴置美春の誓い
今までずっと考えていたわ。
人が人として生きるために。
一体何が正しくて、
一体何が間違っているのか?なんて。
そんなちっぽけなことばかりをずっと考えて過ごしてきたのよ。
だけど。
だけどね。
きっと私の迷いや悩みに明確な答えなんてどこにもなくて。
誰しも心に疑問を抱えながら自分が進むべき道を模索しているんだと思う。
だからもしかすると。
そんなふうに思い悩むこと自体が無駄なのかもしれないし。
意味のないことなのかもしれないわ。
…なんて、ね。
そんなふうに思う気持ちも確かにあるんだけど。
それでも思い悩んでしまうのが人間だから。
自分が進むべき道を誰かに導いてほしいと願ってしまうものなんでしょうね。
その結果として誰かに示された道が自分の望んだ未来とは異なっていたとしても。
示されるままに歩みを進めてしまうものなのよ。
そうして不意に自分の人生を振り返ってみた時に、
これが自分の歩んできた道なんだと思い込んで満足してしまうの。
そうして自分の人生に満足していくんだと思うわ。
…だけど。
それは間違いなんじゃないかしら?
それはとても楽な人生で。
それはとても簡単な人生だけど。
私はそんなふうにはなりたくないって思うのよ。
…でもね。
それはきっとみんな同じで。
みんな自分だけの何かを求めているはずよね?
ありきたりな人生なんて興味はないし。
他とは違う自分だけの人生を手に入れたいと願うから。
だからこそ私はずっと。
ずっとこうなることを望んでいたのかもしれないわ。
日常とは異なる非日常の世界。
そんな世界の訪れを待っていたのかもしれないって思うのよ。
だってそうでしょ?
普通の生活では決して経験することの出来ない命懸けの日常。
そんな日々が生きているという実感を感じさせてくれるし。
自分が本当に必要な存在なんだって自分自身で認識することができるからよ。
『絶望と隣り合わせの日々』
そんな日々の中で。
私は私の想いを貫いていたいって。
そんなふうに思うの。
だけどね。
だけどそれは破滅願望とは少し違う考え方だと思ってる。
私は決して破滅を望んでいるわけじゃないし。
死を望むつもりもないわ。
ただ自分自身の意志で精一杯生き抜いて、
大切な人の支えになりたいと思っているだけなの。
それが良いことなのか悪いことなのかなんてすぐには判断出来ないけれど。
それでもいつの日にか自分自身の人生を振り返ってみた時に。
…もしも自分に満足することができているとしたら?
それが何よりも素晴らしい最高の結末だと思うのよ。
だから私はこれからの人生を彼と共に歩んでいこうと思ってる。
決して楽しいことばかりじゃないと思うし。
決して幸せなことばかりじゃないとも思うけど。
だけどそれでもきっと。
私は私の生涯を強く誇れると思うから。
翔子のように無邪気に明るくはなれないけれど。
それでも翔子のようにたった一人の相手を愛せるような人になりたいの。
そしてもしも愛すべき人を選べるのだとしたら。
私は翔子と同じように彼を愛したいと思う。
一緒に過ごした時間はとてもとても短いけれど。
彼を想う気持ちだけはきっと誰にも負けないと思うから。
だから私は私の生涯を彼に捧げようと思うのよ。
きっとそれが私の幸せだと思うから。
そしてそうすることで翔子を越えることが出来ると思うから。
だから私はもう自分の人生について迷まないわ。
これが私の進むべき道だと決めたから。
だから絶対に後悔なんてしない。
例え行き着く先が悲しみに彩られているとしても。
例え行き着く先が地獄や絶望であったとしても。
私は笑って生きていくって決めたのよ。
…だから。
だから私はもう迷わない。
私は私として生きる。
それが私の人生だから。
…ねえ、それでも良いでしょ?
…きっとあなたなら分かってくれるわよね?
今はまだ上手く言えないけれど。
道に迷ってばかりの私だけど。
あなたならちゃんと分かってくれるはず。
…ねえ、あなたはどう思う?
…あなたならどう思ってくれる?
答えを聞くのがちょっぴり怖くて。
恥ずかしい気持ちもあるけれど。
だけどもしもこんな私の想いをホンの少しでも理解してくれるのなら。
もしもそうだとしたら。
…聞いても良いかな?
そして願っても良いかな?
…ねえ…。
夢って何?
希望は誰にでもあるのかな?
…私には分からないけれど…
…だけどそれは…
誰の心にでもあるのかな?
今の私は道を見失ったままだけど
…だけどいつかは…
自分の進む道が見付かるのかな?
…それがいつになるのかは…
…まだ分からないけれど…
…だけどそれでもね…
…私はただ…
…あなたの側に居たいと想うの…
翔子のようには生きれないけれど
…それでも私は…
『あなたの側に居たいと願うのよ』
これで美春編も終わりです。
どうせ活躍させるならヒロインまで格上げさせようという内容なのですが、
美春も個別に新作を投稿する予定でいます。
おそらく短編になると思いますが…。




