真っ赤に染まったまま
「…置さん。…鈴置さん。」
…う、ん?
何となくだけど体が揺さぶられているような気がしたわ。
…誰かが呼んでる?
そんな気がして静かに耳に意識を傾けてみると。
「…時間ですよ、鈴置さん。」
…え?
まるで苺のような甘い香りを漂わせる竜崎さんの声が聞こえたような気がしたわ。
…ん~。
…良い匂いね~。
そんなことを考えている間に、
無意識のうちに竜崎さんの体を抱きしめてしまっていたようね。
「あ、あぅぅ~。」
とても甘い匂いを漂わせながら可愛らしい声を聞かせてくれる竜崎さんの温もりが心地好くて、
さらに強く抱きしめたくなってしまったのよ。
「ぁぅあぅ~。」
竜崎さんは恥ずかしそうにうめき声をあげていたわ。
…可愛いわね~。
私としては完全に寝ぼけていたせいで、
竜崎さんを抱きしめ続けていたみたいなんだけど。
「…うわ…キモ…っ。」
突如として背後からものすごく聞き覚えのある馬鹿の声が聞こえてきて。
「嫌がってるんだから離してあげなさいよねっ!」
思いっきり頭を叩かれてしまったわ。
「い…つ…っ!?」
…な、何なの!?
今の一撃で完全に目が覚めたわ。
そして今がどういう状況なのかを一瞬で悟ってしまったのよ。
…う、うわぁ!?
寝ぼけながら抱きしめていた竜崎さんの顔が目の前にあって、
今にも唇が触れてしまいそうなほどの距離にいる竜崎さんが顔を真っ赤にしているの。
この状況はさすがに色々と問題があるような気がしたわ。
「ご、ごめんね…っ!」
「い、いえ…っ。」
慌てて竜崎さんから手を離してみたけれど。
竜崎さんの表情は真っ赤に染まったままだったわ。
…あ、あぅぅぅぅ。
…一生の不覚ね。
例え寝ぼけていたとは言え。
竜崎さんに恥ずかしい思いをさせてしまったうえに、
自分の行動が馬鹿すぎて恥ずかしかったからよ。
…あれ?
…でも、ちょっと待って?
何だかこの状況はおかしいわよね?
「ホントに美春は寝起きが最悪よね~。」
…はぁ?
何故かここにいるはずのない馬鹿の声が再び聞こえてきたからよ。




