それならそれで
崩壊した決勝戦の舞台。
試合場の跡地で宙に浮かぶ御堂先輩はファイナル・ジャッジメントの大破壊が収束したことで、
閉じていた瞳をゆっくりと開けてから虹色に輝く聖剣を空に向けて掲げたわ。
「これが僕の力だよ、冬月さん。」
「………。」
すでに冬月さんは意識を失っているから何も答えられないけれど。
それでも御堂先輩は自分の実力を告げてから私達に近づいてきてくれたのよ。
「ありがとう、鈴置さん。きみのおかげで冬月さんを死なせずにすんだよ。」
「…い、いえ。」
「ごめんね。きみにも危険な思いをさせてしまったね。」
「…あ、いえ。私なら大丈夫です。」
「そうかい?だったら良いんだけど…。情けない話だけど僕もまだ自分の力を制御しきれなくて、上手く威力の調整ができなかったんだ。さすがに冬月さんが相手だと手加減なんて出来ないからね。とにかく全力で力を解放するしかなかったんだ。」
…そ、そうですよね。
「なんとなく…分かります。」
だけど。
こういう時にどう答えれば良いのかよく分からないわよね。
褒めれば良いの?
怒れば良いの?
どうすれば良いのかは分からないわ。
…複雑すぎ。
何を言っても間違っているような気がするし。
何を言っても正しいような気もするから。
何とも言えない複雑な心境になってしまったのよ。
…え、えっと~。
…とりあえずはまあ、あれよね?
「私のことは気にしないでください。」
危険がどうこうなんて話はどうでもいいわ。
それよりも重要な問題があるからよ。
「ただ、その…。私のせいで反則負けになったら、ごめんなさい。」
「…ははっ。そうだね。でもまあ、それならそれで仕方がないよ。」
「でも…。」
「良いんだよ。」
私としては謝ることしか出来なかったんだけど。
御堂先輩は怒るどころか微笑んでくれていたわ。
「例え結果がどうだとしてもね。冬月さんを殺してまで優勝したいとは思ってないよ。そんなふうに誰かを犠牲にしなければ手に入らない栄誉なんて必要ないんだ。」
…でも。
…だとしたら。
「負けても良いんですか?」
「ああ。全力を尽くしたうえでの敗北なら仕方がないよ。栗原さんだってそう思うよね?」
「え?私?」
「そうだよ。」
「あ~、うん…。まあ、私は負けてばかりの人間だから敗北自体は特に気にしないわよ。今回の大会でもぶっちぎりの最下位だし。敗北することが悪いとかそんなふうには思わないわ。」
「だろうね。きみならそう言うと思ってたよ。」
「そう?まあ、どう思われてもいいけどね~。とりあえずは頑張ったんじゃない?諦めずに最後まで戦ったのはとても良いことだと思うわ。」
「…ありがとう。だけど僕が最後まで戦えたのは、きみが僕を後押ししてくれたからだよ。」
「そう?私は私の想いを伝えただけだからお礼を言われても困るんだけどね…。それに、ちょっぴり照れ臭いし。」
「ははっ。やっぱりきみは優しい人だね。」
「さあ?それはどうかしらね~。」
褒め称える御堂先輩だけど。
栗原さんは控えめに聞き流しながら各地に倒れている魔女の治療を優先していたわ。
そうして全ての治療が終わったあとで制服についた埃を軽くはたきながら立ち上がって、
改めて御堂先輩に微笑みを向けたのよ。




