能力を喰べた
欠けてしまったルーンを見つめる御堂先輩は、
焦りと不安を感じさせる表情で戸惑い続けていたわ。
「どうしてっ!?」
…どうして?
明らかな動揺を言葉にしてしまうほどあわてふためいてるのよ。
御堂先輩がこれほどまでに取り乱してしまう理由が何なのか?
少し疑問を感じてしまったんだけど。
「ルーンが…復元しないっ!?」
…えっ?
御堂先輩は戸惑いの理由を言葉にしていたわ。
「くっ!?ルーンが元に戻らないっ!」
…は?
…戻らない?
どういうことか良く分からないんだど。
欠けてしまったルーンに再び魔力を送り込んでも、
何故か大剣の刃先が復元できないらしいわ。
その緊急事態によって極度の焦りを感じてるみたい。
…でも。
…ルーンが復元できないなんて、そんなことがあるの?
基本的にルーンの形状は持ち主の意思に応じて変えることが出来るはずよ。
だからその気になれば私の扇だって剣や槍に形を変えることが出来るし。
自由自在に形状を変えることは出来るわ。
…能力は不変だけど形は変えられる。
…それがルーンの基本的な法則のはずよね?
それなのにルーンが本来の姿にさえ復元できないという理由が理解出来ないのよ。
「ルーンが元に戻らないなんてことがあるの?」
「おそらく、冬月彩花さんが御堂龍馬さんの能力を喰べたのではないでしょうか?」
…は?
…喰べた?
何気ない疑問を口に出してみると。
竜崎雪さんが自らの考えを教えてくれたのよ。
「実際にどういう理論があるのかは私にも分かりませんが、一つの可能性として御堂さんの能力を削り取ったのかもしれません。」
「能力を…削り取る?」
「あくまでも可能性の話ですけど…。冬月彩花さんの言葉を借りるなら光を闇で侵食した…ということだと思います。」
「どういうこと?」
「その…。つまり、本来『光』があるべき場所を『闇』が支配したことで光が存在出来なくなったということだと思います。」
…え?
「それって…もしかして…?」
「…はい。おそらく、御堂さんの攻撃は彼女には通じません。それどころか攻撃を仕掛ける度に光が存在を否定されて消失していくはずです。」
…うわぁ。
嫌な予感を感じた直後の竜崎さんの言葉によって、
御堂先輩が窮地に立たされていることを改めて自覚してしまったわ。
「こ、これって…まずくない?」
私以上に分の悪い戦い。
闇を払うだけの力が足りない御堂先輩の『光』では、
冬月さんの『闇』にはどう足掻いても勝てないということよ。
その決定的な事実が冬月さんの宣言によって明らかになってしまったわ。




