臆病な魔女
「強がるのなら、最後まで貫き通すべきだったな。」
それが長野君の宣告。
そしてそれが最後の警告。
「堕ちろ!臆病な魔女っ!」
「くっ!?」
僅かに一歩を踏み出しただけの長野君に対して不安と焦りを見せた文塚さんが後ずさる。
だけどすぐに気持ちを立て直したようで、
すでに準備が整っている光の矢に自らの運命を托そうとしていたわ。
「先手必勝!!」
「遅いっ!」
文塚さんが光矢を放つ前に長野君が懐に忍び込む。
…え?
…近づけたの?
今までと何が違うのかが分からないんだけど。
長野君は文塚さんに手が届く距離にまで接近して見せたのよ。
「くっ!」
…どうして?
「お前の欠点は時差だ。相手の攻撃を先読みしてから対策を考えるまでのホンの僅かな時間差がお前の決定的な弱点になる!!」
…時差?
「………。」
超至近距離にまで接近を許してしまった文塚さんの表情からは一切の余裕が消え去って、
恐怖にも近い焦りを表情に示してるわ。
「お前はもう俺の攻撃を回避できない。」
「………。」
超至近距離から狙うナイフの斬撃を。
文塚さんは…かわせない。
体当たり的に突撃した長野君の攻撃に対応できずに回避に失敗した文塚さんの腹部にナイフが突き刺さったのよ。
…やっと届いたのね。
『ドスッ!!!』と、低く小さく鳴り響いた鈍い斬撃音が試合場から聞こえたわ。
そのあとで。
長野君がナイフを引き抜いた直後に。
切り裂かれた文塚さんの腹部から大量の鮮血が噴き出したのよ。




