哀れな哀れな子羊さん
「ん~、まあ色々と思うことはあるでしょうけどね。だけどこの試合はこれで終わり。そしてジェノスの年間制覇は夢として消えて終わりを迎えるのよ。」
「………。」
倒れている長野君に対して油断なくルーンを構える文塚さんは、
トドメの一撃としてこれまでで最大規模の光の矢を生み出そうとしていたわ。
「これまでもそうだけど、貴方にしても、意気込んで出てきたわりには意外とあっけなかったわね。」
「………。」
「でもまあ、結局のところ貴方達では彩花にまで手が届かなかったっていうことよ。そしてそれがジェノスの限界ということでもあるんでしょうけどね。」
…うぅ。
…限界、ね。
…返す言葉もないわ。
現に3連敗という結果が近付いている状況だから何を言われても仕方がないと思うのよ。
だけど、そんな簡単には割り切れないわよね。
「…くそっ!」
「悔しがったところで現実は何も変わらないわ。決勝戦はジェノスの3連敗で終わるの。それが貴方達の結末なのよ。」
「ち…っ!!」
「ふふっ。それじゃあね。哀れな哀れな子羊さん。」
「ナメるな…っ!!!」
文塚さんの別れの言葉に対して必死に反論しようとした長野君だったけれど。
「残念でしょうけど、ジェノスの栄光は今日で終わりよ。」
必死に訴えようとした言葉さえも光に遮られて消え去ってしまったわ。
…ここまで、なのね。
たった2メートルの距離から放つ極大の光の矢が容赦なく長野君に襲い掛かってしまう。
最初から最後まで一方的な戦いとして。
完璧なまでの実力差を見せ付けて。
文塚さんが放った最後の一撃は長野君の体を飲み込む…はずだったわ。




