出直してきなさい
…長野君っ!?
激しい轟音を響かせながら長野君の体を飲み込んだ光の矢。
どう考えても直撃したとしか思えない絶体絶命の窮地だったけれど。
「…こ、こだ…っ!!」
破壊の衝撃と爆風を利用した長野君は、
これまでを上回る最速の動きで文塚さんの目前にまで接近してみせたのよ。
「この瞬間を待ってたんだ!!」
文塚さんに接近するために、
あえて文塚さんの攻撃を受けたようね。
「…仕留めるぜ…っ!」
どんな状況でも離さずに。
最後まで握り締めていたルーンを振りかざして。
「終わりだっ!!」
目の前にいる文塚さんの体に狙いを定めた長野君が鋭いナイフの先端を全力で突き立てる。
…はずだったのに。
「は・ず・れ。出直してきなさい。」
命懸けの特攻でナイフを突き立てようとした長野君の攻撃さえも通じなかったわ。
あっさりとナイフを回避した文塚さんは、
クルッと一回転した勢いで長野君の背中に狙いを定める。
そして攻撃に失敗した長野君を思いっ切り蹴り飛ばしたのよ。
「ぐっ!?ぁ…っ!!」
攻撃が外れたことで態勢が崩れた瞬間に蹴り飛ばされた長野君は、
文塚さんを通り越してから2メートルほど離れた場所で完全に動きを止めてしまったわ。
「く…く、そっ!」
…うわぁ。
攻撃が外れてもまだ戦う意識を失わない長野君はすごいと思う。
だけどもう立ち上がるための気力さえ尽きてしまったようね。
悔しそうな表情を見せる長野君は、
視線だけを文塚さんに向けて睨みつけることしか出来ない様子だったわ。
「あらあら、残念だったわね~。」
「………。」
哀れむような表情で見下ろす文塚さんに対して反論できない長野君は、
悔しそうな表情で文塚さんを睨みつけてる。
「くそ…っ。まさかこの俺が手も足も出せないとは…な…っ。」
「ふふん。だから言ったでしょ?これが私の実力なのよ。」
試合開始前から今に至るまで自信満々に構える文塚さんからは微塵の隙も感じられないわ。
…いくらなんでも強すぎるでしょ。
私も絶望を感じてしまうほど圧倒的劣勢な状況。
一発大逆転を狙って最後の作戦に出た長野君の攻撃は結局最後まで不発に終わってしまったわ。




