無駄なのよ
「勝負はまだ、ここからだ…!」
…う~ん。
かすれる声で必死に強がる長野君だけど。
誰がどう考えてもすでに決着がついているように見えるわよね。
…この状況でまだ戦うの?
私としては一刻も早く試合を止めるべきだと思うんだけど。
「お前は俺が倒すっ!!!」
長野君は意識を保てる残り僅かな時間に全てを賭けて最後の特攻を開始してしまったわ。
「これが…最後だっ!!!」
両手でイクシオンを生み出してから全力で駆け出す。
二筋の極大の雷撃を放ってから即座にルーンを構えて全力疾走する長野君だけど。
「う~ん。懲りないわね~。」
文塚さんはルーンを巧みに操ることで両手を空けて、
迫り来る雷撃をあっさりと受け止めてしまったわ。
「言っておくけど、数は問題じゃないのよ?」
例え両手が塞がっても何の支障もないみたい。
実際に掴み取った雷撃で長野君の視界を遮っているのよ。
「どんな作戦を立てても無駄よ。」
圧倒的に優位な立場から宣告する文塚さんだけど。
「それでもやるしかねえだろっ!!!」
長野君は諦めずに特攻を続けていく。
「まずは一撃入れるっ!!!」
「だから、それが無理なのよ…。」
雷撃による目くらましを全力で突破した長野君に対して文塚さんが光の矢を放つ。
「私には近付けないわ。」
「ナメるなっ!!!」
迫り来る光の矢を回避しながらさらなる一歩を踏み出す。
命懸けの特攻だけど。
長野君の動きを見つめる文塚さんは、
まるで全てを悟っているかのような冷静な表情を崩さない。
「…何を企んでも無駄なのよ。」
走り続ける長野君を光の矢で追尾していく。
「どこにどう避けるのか、全部見極めてるんだから。」
「っ!?」
全て把握してると告げた直後に。
後方から追尾していた光の矢が長野君の背後に襲い掛かったわ。




