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THE WORLD  作者: SEASONS
5月14日
4326/4820

本当に大切なモノを

激しい風切り音を響かせながら一直線に放たれた光の矢が、

接近しようとしていた長野君を完璧に捕らえてる。



…これは、もう。



どう考えても回避不可能な一撃が長野君の体を飲み込んでしまったのよ。



「ぐっ!?ああああああっ!!」



真正面から激突した光の矢は文句なしに直撃して、

接近戦に持ち込もうとしていた長野君を場外まで弾き飛ばしてしまったわ。



「く…っ!!」



場外に弾き出されて地面に落下した長野君の体が激しい勢いで地面を跳ねる。


そしてそのまま数メートルの距離をゴロゴロと転がり続けたわ。



「く…そ…っ!」



…厳しいですね。



頑張っても頑張っても届かない距離。


駆け出せば駆け出すほど反撃で受ける威力が高まってしまって、

近づけば近づくほど残り僅かな距離が遥か彼方のように遠く感じてしまうのよ。



そんな絶望的な距離感を感じている様子の長野君は落下の衝撃で身体を痛めたのか、

口から血を吐いてうずくまってしまっているわ。



「ぐ、がはっ!!!ち…くしょ…う…っ!!」



震える体でも必死に立ち上がろうとしてる。


なのに体は意思に反して動かないみたい。



「はぁっ…はぁっ…。」



徐々に荒くなっていく呼吸。


長野君の状況は見た目では分からないけれど。


急いで治療しなければいけない危険な状態に思える。



…苦しそう。



虚ろな瞳と震える体。


乱れる呼吸と吐き続ける血。



それらを総合的に考えるとすると?



…内蔵が破裂したのかもね。



あるいは体内の骨がどこかに突き刺さっている可能性もあるわ。



…どちらにしても危険な状況なんだけど。



それでも長野君の意志はまだ朽ちていないように見えるのよ。



…まだ戦うの?



ここで負けを認めればその時点でジェノスの敗退が確定するけれど。


だからと言ってこのまま戦い続ければ本当に大切なモノを失ってしまうかもしれないわ。



「長野君…。」



試合を止めようかどうかで悩んでしまったんだけど。



「大丈夫ですよ♪」



私のすぐ傍にいる竜崎さんは長野君ではない別の場所を見つめながら微笑んでいたわ。


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