僕はまた
…う~ん。
第2試合が終了して桜井さんの治療が進む中で、
搬送自体が不可能と判断された矢野さんの治療は試合場で始まるようね。
「雪!!間に合うか!?」
「う、うん。多分…。」
少し自信がなさそうな表情で治療を始める竜崎さんだけど。
さすがに即死級の重傷を負っている矢野さんの治療は私では手伝えないわ。
「だ、大丈夫でしょうか…?」
「…信じるしかないよ。」
私としては不安を感じて呟くしかなかったんだけど。
御堂先輩は大人しく待機所から試合場を眺めてる。
「僕達が参加しても足手まといになるだけだからね。今は竜崎さんを信じるしかないんだ。」
…そう、ですね。
御堂先輩の言う通りだと思うわ。
…だけど。
悔しいですよね。
強く拳を握り締めて。
強く唇を噛み締めて。
怒りや悔しさを必死に堪える御堂先輩の表情からは悲しみにも似た雰囲気を感じてしまうのよ。
…辛そう。
御堂先輩が何を想って何を悩んでいるのかなんて正確なところは分からないわ。
だけど大切な仲間が立て続けに倒れたことで自分を責めているんだと思う。
…きっと試合に負けたことよりも。
仲間を死に直面するほどの危険な戦いをさせていることを悔やんでいるのよ。
…自分が傷付くくらいは良いとしても。
仲間を苦しめている原因が自分だと分かっている以上、
どうしても悔やんでしまう気持ちは生まれてしまうと思う。
…先輩。
今の御堂先輩なら自分の夢を諦めて優勝という目的さえ放棄しかねないわ。
「御堂先輩…。」
「僕は…僕はまた…間違った道を進んでいるんだろうか?」
………。
私の予想通り自分を責めているのよ。
だけどそれが分かっていても、
私には御堂先輩の迷いを拭い去ることは出来ないわ。
…だとしても。
「間違ってはいないと思います。」
私は私の想いを答えることにしたの。




