表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
5月14日
4304/4820

切り替わったのね

「ただ向かって来るだけでは戦いにならないわよ?」



俊敏な動きで桜井さんに接近した矢野さんは、

両手で握り締めている長剣を振り上げてからすぐに刃を振り下ろしたわ。



…直撃!?



『ザシュッ!!』と、響く異音。



「う…っ…。あぁぁぁぁぁっ!!!」



服が破れて。


肉が切り裂かれて。


骨まで砕かれて吹き出す血飛沫が試合場を赤く染めていく。



「ぁぁ…。ぁぁ…っ。」



左肩から右脇腹にかけて大きく切り裂かれた桜井さんは、

試合開始から僅か十数秒で致命的な重傷を負ってその場にあっさりと崩れ落ちたのよ。



「……ぅ…ぅ。」



試合場に倒れ込んだ桜井さんの周りに急速に広がっていく血溜まり。


桜井さんの体から溢れ流れる真っ赤な鮮血が矢野さんの足元まで流れていくのが見えてしまう。



「…弱すぎるわよ?」


「………。」



倒れた桜井さんを見つめる矢野さんは、

流れる血を避けるために一歩後ろへ後退しようとしたようね。


だけど矢野さんが動き出す直前に、

桜井さんの右手が矢野さんの左足をしっかりとつかみ取っていたわ。



「…何?」



突然の出来事に驚く矢野さんが足元に視線を向けてから桜井さんに視線を戻した時にはすでに手遅れだったみたい。



「ふふふっ…♪」



血まみれで倒れた桜井さんの表情がいびつに歪んでいたのよ。



「あはっ♪あはははっ♪♪」



血まみれの顔で狂ったように笑う。


そのあまりの変貌ぶりによって、

彼女に何が起きたのかがすぐに理解出来たわ。



…人格が変わったの?



「切り替わったのね。」



ほぼ同時に異変を察した私と矢野さんが桜井さんの変貌に注目していると。



「あはははははははははははははははははははっ♪♪♪」



大きな笑い声を上げた桜井さんは、

つかみ取った矢野さんの足をぎりぎりと握り締めてから『ブンッ!!!』と大きく振り回したのよ。



「くっ!?」



…うそぉ!?



あまりにも異常な出来事によって驚いてしまった私の視線の先で、

桜井さんは有り得ない行動に出ていたわ。



…さすがに無茶苦茶よっ!!



負傷しているはずの体で。


倒れた状態で。


右手の腕力だけで。


矢野さんを投げ飛ばすという絶対に有り得ない荒業に出たのよ。



「うふふふふふっ♪あははははははははっ♪♪♪」



狂ったように笑いながら血まみれの体を起こした桜井さんがしっかりと自分の力だけで立ち上がる。



…そ、そんなっ!?


…立ち上がれるような小さな怪我じゃないわよねっ!?



医者の卵の私から見ても桜井さんの怪我は今すぐに治療が必要なほど危機的な重傷のはず。



皮膚が斬られて。


骨が砕けた腹部からは。


決して見えてはいけない体内の臓器まで露出しかけているからよ。



それなのに桜井さんはまるで痛みを感じていないかのように、

先程よりも機敏な動きで投げ飛ばした直後の矢野さんに向かって駆け出してしまう。



…こ、この子も危ないわ。



宮野あずささんも恐すぎる存在だと思ったけれど。


桜井さんはそれ以上の危険人物なのよ。



…こ、これはっ。



まるでゾンビのように矢野さんに襲い掛かる桜井さんの姿からは嫌悪感しか感じられないわ。


気持ち悪いとしか言えない異常な光景なのよ。



「あはははははははははっ♪♪」


「くっ…。」



必死に体を起こして体勢を立て直そうとしている矢野さんだけど。


狙いを定めた桜井さんは狂喜の笑い声を上げながら先程掴んでいた矢野さんの左足に『ガブリ』と噛み付いてしまったわ。



…う、そ、っ!?



瞬時に冷え込む体。


ただ見ているだけなのに全身に悪寒が駆け巡って。


恐怖を感じた体が一瞬だけ震えた直後に。



『ブチィッ!!!』と肉が裂ける音を響かせた桜井さんが、

矢野さんの左足のふくらはぎを容赦なく喰いちぎったのよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ