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THE WORLD  作者: SEASONS
5月14日
4295/4820

切っちゃえ~

「行きますよぉ♪♪」



試合が始まってからすぐにお気楽な雰囲気で駆け出す。


そんな宮野あずささんの動き自体は普通よりも少し早いくらいで、

驚くほどの速さじゃないように見えるわ。



…それなのに。



「一緒に遊びましょ~♪」



可愛らしい笑顔で告げる楽しそうな言葉とは裏腹に、

彼女の両手に生まれる魔術は殺伐として深淵と呼ぶべき闇の気配を纏っているのよ。



…うわぁ~。


…恐すぎ。



可愛い見た目に反して殺戮の魔術を操る宮野さんの姿は天使の顔をした悪魔のようにも見えてしまう。



…彼女はどんな力を?



宮野さんはどんな力を隠し持っているのかしら?


その隠れた才能に興味をもって二人の試合を眺めていると。



「動きが遅すぎるわよっ!!!」



突撃して来る宮野さんに対して芹澤さんが迎撃に出たわ。



「フェニックス!!!!!!」



炎の鳥が両翼を大きく開いて上空へと飛翔していく。


そして芹澤さんの意志に応じて宮野さんへと下降したわ。



「燃え尽きなさいっ!!!!」



高速で空を飛ぶ炎の鳥が宮野さんの動きを捕らえる。


巨大な嘴を開いた直後に彼女の小さな体を丸呑みにしてしまったのよ。



…そのはずなのに。



「えへへ~っ♪切っちゃえ~♪」



炎の鳥に飲み込まれたはずの宮野さんは、

準備していた魔術であっさりと炎の鳥を分断してしまったわ。



「楽チン♪楽チン♪♪」


「なっ!?そんな…っ!?」



自慢の精霊をたやすく撃破されたことで芹澤さんは驚愕の表情を浮かべているわ。



「あれあれ~?もう終わりですかぁ?」



対する宮野さんは笑顔を絶やさないまま歩みを進めて芹澤さんの懐に接近していく。



…いやいや、だから怖いってば。



その場にいない私でさえ戦慄を感じてしまう異様な状況なのよ。



「くっ!!ヴァンガード!!」



芹澤さんは慌ててルーンを発動したわ。



「ほぇ?今度はルーン勝負ですかぁ?それじゃあ『ちゃーむわんど』ですぅ♪」



普段の状況なら可愛いと思うだけの甘い声で疑問を口にだした宮野さんは、

芹澤さんに接近したままで淡いピンク色の可愛らしい短めの杖を発動したのよ。



「どっちの杖が強いと思いますかぁ♪♪」


「ったく、気持ち悪いのよっ!」



全く微笑みを絶やすことなく楽しそうな態度で杖を握り締める宮野さんに対して、

単純な打撃として大きく杖を振り回した芹澤さんが攻撃をしかけようとすると。



「痛いのは嫌ですぅ♪」



宮野さんはさらに踏み込んで芹澤さんの体に抱き着いたわ。



「これで安心ですぅ♪」


「ちょっ!?気安く触るんじゃないわよっ!!」



自分に向けては杖を触れないという考えで一安心する様子の宮野さんに芹澤さんが魔術を放つ。



「ダンシング・フレア!!!」



激しい炎を生み出して宮野さんに攻撃を試みる芹澤さんだけど。



「怒ってばかりだと疲れますよぉ♪♪♪」



宮野さんは自分から炎の中に飛び込んで再び炎を切り裂いてみせたのよ。



…うわ~。


…強すぎ。



学園で習得できる魔術としては最高位の炎系魔術でさえも効果がないようで、

宮野さんは火傷一つ負うことなく燃え盛る炎の全てをあっさりと断ち切っていたわ。



…って、言うか。


…炎って切れるの?



その一点に関してすごく疑問を感じるものの。


事実として宮野さんは炎を分断して消し去っているのよ。



…魔術を切り裂く能力が宮野さんの力なの?



そんなふうに考えていると。


「ちっ!詰んだな…。」


長野君が何かを諦めるかのような雰囲気で小さく舌打ちをしていたわ。



「やっぱり里沙では荷が重かったか…。」



…えっ?



「それは…どういう?」



どういう意味なのかを問い掛けようとしたんだけど。



「この程度ですかぁ?」



どうやら話を聞いている暇はないようね。



「ちゃんと攻撃しないと私が勝っちゃいますよぉ♪♪」



可愛い笑顔と甘い声で芹澤さんに話し掛ける宮野さんの発言からは悪意しか感じられなかったわ。



「このっ!!憎たらしいわねっ!!!!!」



攻撃が通じないことにさらなる苛立ちを感じて、

連続的に極大魔術を展開しようとする芹澤さんだけど。



「無駄ですよぉ♪♪」



宮野さんは笑顔を絶やすことなく芹澤さんが放つ全ての魔術を次々と切り裂いていったのよ。


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