勝ち点を増やすこと
「…と言うことで、これでもう後戻りは出来ないからな。」
試合順を記した表を提出し終えてから待機所に戻ってきた長野君は、
気持ちを切り替えるかのように真剣な顔付きで私達全員の表情を見渡していたわ。
「多少不安はあるが、妥当な試合順だと思う。だからあとは各自がそれぞれに全力を尽くすしかない。」
…そうですね。
全ての準備が整ったことで、
ここから先は結果が全てということよ。
…今回、私は4番目ね。
そこまで順番が来るかどうか分からないけど。
決勝戦での試合順は4番目になっていたわ。
…3試合目までの試合展開次第では、かなり危機的な状況になるような気がするけど?
それでもなんとか試合を乗り越えられれば最後の試合は安心して全てを委ねることが出来るはず。
…確かに妥当かしらね。
個人的には問題ないと思うわ。
1試合目に芹澤里沙さん。
2試合目に矢野百花さん。
3試合目に長野淳弥さん。
そして4試合目に私が出て。
最後の5試合目に御堂先輩が出るからよ。
…最後の御堂先輩まで繋げられれば。
ジェノスが優勝できる可能性が格段に上昇するはず。
「一応、3試合目に冬月彩花が出てくるという予想で試合順を組んであるが、上手く引き分けに持ち込めれば作戦勝ちに持って行けるだろう。」
…なるほど。
要するに一番危険な冬月さんをあえて避けることで他の試合で勝率を上げるということよ。
だからもしも長野君の言葉通りに冬月彩花さんが3試合目に出てくれれば、
他の試合で勝ち点を稼ぐことが出来るはず。
「鈴置と御堂の勝利は確定として、問題は俺が冬月彩花を引き分けに持ち込めるかどうかと、里沙と百花が勝ち点を稼げるかどうかだな。」
…ん~。
ジェノスの作戦はあくまでも勝ち点を増やすことを目指して試合順を決めたみたいだけど。
…これで冬月彩花さんが3試合目に出てこなかったら、ちょっぴり気まずい雰囲気になる気がするかも?
実際の試合順がどうなるのかは始まってみなければ分からないからよ。
「上手くいくと良いですね。」
複雑な想いを抱きながら何気なくカリーナ側へ視線を向けてみると。
…うわぁ。
妖しく微笑んでいる冬月彩花さんと目があったような気がしたわ。
…まさか。
…4試合目に出てくるとか、止めてよね?
それだけは本気で避けたいと心の底から願っていると。
「それではさっそく決勝戦の第1試合を始めたいと思います!!」
ついに決勝戦が始まってしまったのよ。




