それももう終わり
「「「頑張れーーっ!!!」」」
「「「どっちも応援してるぞー!!」」」
…ふぅ。
決勝戦の開始が宣言されてからずっと留まる様子を感じさせない幾千の声援が会場全域から広がる中で決勝戦の舞台に視線を向けてみる。
…ここが最後の舞台、なのよね。
改めて試合場と向き合ってみると。
自然と体が震えるほどの緊張を感じてしまったわ。
…こういう場所を聖域って呼ぶのかしら?
全ての学園にとって。
そして全ての生徒にとって。
夢の舞台とも言える決勝戦の試合場は、
汚れ一つ存在しない神聖な聖域のように思えたのよ。
…ここで。
…この場所で。
御堂先輩は天城総魔と戦って敗北を迎えたらしいわ。
…だからここが、天城総魔が頂点を手にした場所なのよね。
全ての学園の頂点に立ち。
全ての生徒の頂点に立った伝説の試合場。
そんなふうに思うだけで、
この場所がどれほど素晴らしい場所なのかが体全体で実感出来るような気がしたわ。
…ここに、私も立つのよね。
かつて天城総魔が戦った舞台。
その舞台と同じ場所に立てると思うだけで言葉に出来ない不思議な気持ちを感じてしまうのよ。
…ふふっ。
…何だからしくないわね。
自分らしくないと思うほど不思議な気持ちが込み上げて来るの。
…こういうのを恋っていうのかしら?
すでに亡くなった相手を想ったところで何の意味もないけれど。
それでも込み上げて来る想いを消し去ることは出来なかったわ。
…出来ることなら、もう少し関わっていたかったかな。
今さら何を思っても手遅れだけど。
それでもこの想いは止まらないの。
…もう一度あなたに逢いたいよ。
そんなふうに想いを込めながら彼が辿った道程を私も歩んできたけれど。
…それももう終わりなのね。
ここで全てが終わるから。
彼が歩んできた過去はこの場所で終わってしまうから。
ここから先はすでに終わりを迎えた戦争の中にしかないわ。
…だからここで。
…彼のあとを追い掛けるのも終わりにするわ。
魔術大会が終わりを迎えた時に、
私の旅も終わりを迎えることになるのよ。
…良い想い出だったかな。
まだ終わったわけじゃないけど。
感傷的な気持ちを感じてしまう。
…次はどうしようかな?
これから先の未来で私は何を目指せば良いのかしら?
そんなことさえ分からなくなってしまった今の自分を。
…いつか乗り越えられるのかしら?
いつの日にか。
私は私を誇れるような。
そんな人生を生きていたいと願う。
…ねえ、貴方はどう思う?
答えのない問い掛けを試合場に向けながら、
ゆっくりと深呼吸を繰り返すことにしたわ。




