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THE WORLD  作者: SEASONS
5月14日
4287/4820

度胸(?)

ここから美春編になります。


当初は一度だけ登場して終わるわき役だったはずなのですが…。


気が付けばヒロインの親友の立場を確立して何度も登場したうえで、

いつの間にか主要メンバー入り。


ある意味、最も出世した人物かもしれません。


「さあ!ついにこの時がやって来ましたー!!今回の魔術大会もいよいよ大詰めとなる決勝戦ですっ!!!!!!」



「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」」」」」



…うわぁ。


…相変わらず凄い声援ね。



進行を担当する係員の宣言によって、

耳が痛くなるくらい盛大な歓声が急速に広がっていったのよ。



「どっちも頑張れーっ!!!」


「ジェノスの年間制覇を期待してるぞーっ!!!」


「いや!カリーナこそが最強だー!!」



今回はジェノスとカリーナの両方を応援する声が会場の各地から聞こえてくる。



「…凄い声援ですね。」



これから行われるのが決勝戦ということもあるでしょうけど。


すでに他の試合は全て終わっているということもあって、

会場に集まっている全ての人達が決勝戦の舞台に視線を集めているのよ。



「これが決勝戦の舞台なんですね。」



広大な敷地面積を誇るグランパレスの中心。


数多くある試合場の中でも最大規模の広さと強度を持つ決勝戦の舞台だけは、

神聖な雰囲気を感じさせる不思議な魅力があるような気がしてくる。



「ここで戦うんですよね。」



最後まで勝ち上がってきた2校だけが立つことの許される頂点を争う舞台。


この舞台に立つことが御堂先輩の悲願で、

年間制覇の夢を叶えるための最後の舞台になるのよ。



だからこそ私達はここで勝利を手にするために戦い続けてきたといっても良いでしょうね。



「これで最後だと思うと…何だか緊張してしまいますね。」



心臓の鼓動が加速していくのが分かる。


指先が小さく震えるくらい抑え切れない緊張感が私の心を支配しているわ。



「優勝…出来るでしょうか?」


「ふふん!当然でしょっ!!やるからには勝つ!それ以外の選択肢は存在しないわっ!!!」



少なからず感じる不安や拭いきれない迷いを言葉にしてみたんだけど。


芹澤さんはいつものように強気な発言をしながら周囲に聞こえるくらい大きな声で優勝を宣言していたわ。



「勝つのは私達よ!!!」



…あ、あはははっ。



そこまで自信を持てるのはちょっぴり羨ましいわね。



「優勝を手に入れるのはジェノス魔導学園なんだから!絶対に負けないわっ!!



…ですね。



ここまで勝ち上がってきた自信と絶対に負けを認めない勝ち気な性格で勝利を目指す芹澤さんだけど。



「…強がるのは良いが、次は絶対に油断するなよ?」



長野君は落ち着いた口調で忠告していたわ。



「準決勝での結果を忘れるな。例えどれほどの実力差があるとしても、油断をすれば隙が生まれる。そしてその隙が時として命取りとなるんだからな。」



…ええ、そうね。



1時間ほど前に行った準決勝で無名の学園の生徒を相手にして引き分けてしまったから改めて忠告してくれたのよ。



…なのに。



「ったく、うるさいわね~。一々、言われなくてもそれくらい分かってるわよっ!!」



芹澤さんは素直に忠告を受け入れる気はなさそうだったわ。



「ちょっとした失敗をいつまでも引きずるなんてダサいわよ?」


「………。」



失敗を失敗として認めずに強気な態度で反論できる芹澤さんの度胸(?)は正直に言ってすごいと思う。



…私には真似できないわ。



そんなふうに生きられたら少しは楽に生きられるのかもしれないけどね。


芹澤さんの性格を羨ましく思う気持ちはあるけれど。



…だけど長野君は可哀相かも。



せっかくの忠告を怒鳴り返されたらもう何も言えないわよね。



「…ま、まあまあ、落ち着きましょう。」



放っておくと喧嘩に発展しそうな二人の間に入って仲裁してみようとしたんだけれど。



「はぁ…。分かっているならそれで良いが、これだけは忘れるな。」



長野君は今回だけは引き下がらずに、

もう一度強く念を押すように芹澤さんに警告していたわ。


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