見せ掛けただけの
「偽りの魔術?」
…ええ、そうよ。
まだ真実に辿り着けない乃絵瑠に説明を続ける。
「転移したと見せ掛けただけの単なる高速移動よ。」
「えっ?そうなの?」
…ええ。
「距離が近いから転移したように見えるだけで、実際には短距離を高速移動しただけに過ぎないわ。」
だからこそのシャドウ・ステップ。
影から影へ移動するだけの単純な高速化の魔術でしかないわ。
「半径1メートル。その範囲内であれば瞬時に移動できる。それだけの魔術よ。」
もとろん高速化を実現するためには身体強化と高速移動の両方を両立させなければいけないから体力的にも魔力的にも消耗が激しいわ。
「短距離限定の高速移動と考えれば良いわね。」
フェイ・ウォルカと接近戦を行っていたから効果を発揮しただけで、
ある一定の距離をとられていれば今回のように上手くはいかなかったはずよ。
「フェイ・ウォルカを制するための最後の一手として隠していた切り札になるわ。」
だからこそあえてフェイ・ウォルカを挑発して接近戦へと持ち込んで、
大技を放った直後の隙を探り続けていたのよ。
「転移は私にも出来ないわ。いずれ完成させるつもりでいるけれど、今はまだ無理ね。」
フェイ・ウォルカの指摘通り、
空間を歪める魔術は誰にも出来ないとされているわ。
だけどそれでも。
求め続けてさえいればいつかは手に入れられるはず。
「完成させて見せるわ。いつの日か必ず…本物の空間転移をね。」
偽りを真実に。
空想を実物に。
夢幻を現実に。
「いつか必ず…ね。」




