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THE WORLD  作者: SEASONS
5月14日
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おそらく今頃は…

「え~っと…。とりあえずご苦労様でした。」


「貴女も何か知っているの?」



軽く睨みつけながら問い掛けてみたものの。



「…そうですね。」



竜崎雪は少しだけ悩むような表情を見せてから黙々と私の治療を始めたわ。



「お怪我はないようですけど、魔力の供給だけはしておきますね。」


「…今度は貴女が手を貸してくれるの?」


「ええ、まあ、そうですね。本当は皆さんの担当は栗原さんなんですけど。今はもう一つの試合場も大変な状況ですので、本当は私達が動ける状況じゃないんです。」



…は?


…動ける状況じゃない?



「それはどういう意味?」



竜崎雪の言葉の意味がさっぱり分からない。



「まさかジェノスが追い込まれているなんて言うつもりじゃないでしょうね?」


「そ、それが…その…。」



…まさか?


…本当に?



「ジェノスが負けているの?」


「…1勝1敗2引き分けです。現在は鈴置美春さんが最終戦を行われていますが、おそらく今頃は…」


「決着が着いている…?」


「…かもしれません。」



…そんな?



ジェノスが負けるなんて私でさえ考えられない事態だったわ。



それなのに。


私の試合が終わってからまだホンの数分しか経っていない状況で。



「こ、これは…っ!?これはまさかの展開ですっ!!!優勝候補のはずのジェノス魔導学園がついに倒れてしまいますっ!!!!」



…なっ?


…冗談でしょう?



突如として別の試合場を担当する係員の声が私達に届いてきたのよ。



「5試合目も引き分けですっ!!これでジェノス魔導学園とメドラス魔戦学園の延長戦が確定しましたー!!!」



…延長戦?



ジェノス魔導学園が無名の学園を相手に延長まで持ち込まれている?


その事実が私には理解出来なかったわ。



「一体、何が起きているの?」



何も分からずに竜崎雪に問い掛けてみると。



「メドラスの生徒が…自爆を仕掛けているんです。」


「自爆?」


「ええ、そうです。最初から勝利を捨ててジェノスの全滅を狙っているようなんです。」



…全滅狙い?



「どうして…?」


「…それは私には分かりません。ですがメドラスの生徒の自爆攻撃によって矢野百花さんと芹澤里沙さんは引き分けに…。御堂龍馬さんは堪え切りましたが、和泉由香里さんは敗北して鈴置美春さんも引き分けたようですので…。」



…つまり、本当に?



「1勝1敗3分け?」


「…はい。次の延長戦で勝利した学園が決勝戦進出ということになりますけど…。」


「ジェノスに残っている戦力は御堂龍馬と長野淳弥だけというわけね。」


「…はい。」


「油断していたの?」


「い、いえ…。みなさん全力で戦われました。ですが、それでも相手側も強かったということだと思います。」


「メドラスにそれほどの実力者がいるというの?」


「…というよりも、自爆狙いなので実力どうこうよりも攻撃の射程に入ったら最後…という形です。」



…なるほどね。



「ジェノスを勝たせないためだけの特攻というわけね。」


「はい。そのせいであちら側は重傷者が続出でして…。」


「痛み分けの結果が全滅寸前という状況なのね。」


「…そうですね。」


「さすがにここでジェノス負ければ栗原薫の計画も崩壊かしら?」


「…どうでしょうか?そうなることさえ計画の一部かもしれません。」



………。


…気に入らないわね。



竜崎雪がどこまで真実を知っているのか?


不明な部分はあるけれど。



もしも推測が真実であればジェノス魔導学園は意図的に窮地に追い込まれているということになるのよ。



…自爆攻撃を乗り越えたあとに私達をぶつける。


…その一連の流れが何者かの計画ということね。



栗原薫の背後にいる人物がジェノス魔導学園を徹底的に追い込んでいるのよ。


それだけははっきりと確信が持てたわ。



「ジェノス魔導学園を追い詰めることが栗原薫の計画なのね?」



それしかないと考えて問い掛けてみたけれど。



「…私には分かりません。」



竜崎雪は本当に何も知らない様子だったわ。



「私が聞いているのは、ごく一部の出来事だけですので…。」


「栗原薫の計画には関与してないの?」


「…はい。私はただ皆さんの治療を依頼されただけですので…。」


「誰に?」


「栗原さんに、です。」


「その背後にいる人物に、でしょう?」


「………。」



栗原薫とは違って竜崎雪なら情報を引き出せるかもしれないと考えてみたものの。



「それは私には言えません。」



竜崎雪ははっきりと断言していたわ。



…ふぅ。



竜崎雪も何も答えない。


そして乃絵瑠は今回もまた真相に辿り着けなかったらしいわ。



…この子も厄介ね。



乃絵瑠でさえ探れないという事実を考慮すれば、

この子達の背後にいる人物が何らかの妨害しているとしか考えられない。



…だとすれば探り出すのは不可能ね。



乃絵瑠の力も当てに出来ないし。


この子達から直接情報を引き出すことも出来ないからよ。



…となれば、今は黙って様子を見るしかなさそうね。



そんなふうに考えた瞬間に。



「…遅くなりましたが、第3試合の結果をもって準決勝を終了とさせていただきます!!!」



今まで滞っていた進行が今になって再開されたのよ。


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