贅沢な結界
「細雪突きっ!!!」
………。
魔術ではない単純な槍術として無数の連続突きを放つフェイ・ウォルカの攻撃を冷静に受け流していく。
「攻撃は無駄だと言ったはずよ?」
「ふん!それはこれを凌いでから言うんだな!黒炎衝!」
…ああ、なるほどね。
フェイ・ウォルカの連撃をかすり傷一つ負わずに冷静に捌いていく中で新たな魔術が襲ってきたわ。
「闇には闇だっ!!!」
…ふふっ。
かつて天城総魔に向けて放った黒い炎を生み出して、
魔獣を串刺しにしてから一気に燃やし尽くそうとするフェイ・ウォルカだけど。
その判断は間違っているわ。
瞬時に拡大して魔獣を包み込んだ漆黒の炎が地獄の猛火とも呼ぶべき灼熱の炎で魔獣を焼き尽くそうとするけれど。
炎が発する光によって一時的に魔獣の動きが弱まっただけで、
魔獣を焼失させるにはいたらないからよ。
「例え闇の属性を持っているとしても、炎で影は消せないわよ?」
「ふっ。その程度のことは百も承知だ!」
即座に答えたフェイ・ウォルカは、
魔獣が僅かに動きを止めた一瞬の隙を狙って二本の槍を私に向てくる。
「一瞬で十分っ!!双槍奥義…!」
ラングリッサーとファルコン。
二本の槍を交差させながら魔術を展開するフェイ・ウォルカが膨大な魔力をルーンに送り込んでいく。
「テンペスト!!!!!!!!」
十文字の軌道を描いた究極の衝撃波が炸裂する瞬間に。
「「「「「シールドっ!!!!!!」」」」」
複数の方角からほぼ同時に防御結界が展開されたわ。
「ったく!!ちょっとは周りのことを考えなさいよね!!」
「あ、あぶなかったです…っ。」
結界を展開した栗原薫と竜崎雪の声が聞こえた直後に。
「防げるかしら…?」
「やるしかないのよっ!!」
上矢遥とシェリル・カウアーの声も聞こえてきたわ。
…ふふっ。
…随分と贅沢な結界ね。
すでに試合場の結界が消失していることで私とフェイ・ウォルカの戦闘によって周囲に及ぶ被害を食い止めるために、
結界魔術に関しては超一流と呼ぶべき魔女達が防御結界を展開して私達を結界の内部に隔離したのよ。
…良い判断ね。
澤木京一以上の力を発揮するフェイ・ウォルカの攻撃が発動した直後での結界の発動によって私の逃げ場も失われたけれど。
…私は女王よ。
最初から逃げるつもりも隠れるつもりもないわ。
「シャドウ・ステップ!!!」
至近距離で放たれたフェイ・ウォルカの魔術が私に直撃する直前に。
「…おやすみなさい。共和国軍の武神さん。」
フェイ・ウォルカの影へと転移したのよ。




