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身動き一つとらずに
「試合…始めっ!!!」
係員の号令によって始まる試合。
ピーター・フロンドと奈々香の試合が始まったわ。
この一戦の結果によってはデルベスタ多国籍学園に対して王手を仕掛けられる重要な試合になるものの。
「………。」
奈々香は身動き一つとらずに黙ってピーター・フロンドの動きを眺めていたわ。
…どうするつもりかしら?
奈々香が何を考えているのかは私にも分からない。
だから…と言うわけではないけれど。
確認のために乃絵瑠に視線を向けてみると。
「………?」
乃絵瑠も戸惑うような表情を浮かべながら奈々香の行動を不思議そうに眺めていたわ。
…ふふっ。
…なるほどね。
どうやら乃絵瑠にも把握できないことがあるようね。
それがどういう基準なのかはまだ分からないけれど。
何もかも把握できるわけではないということは明らかになったわ。
………。
奈々香の行動に戸惑いを感じる乃絵瑠と、
そんな二人を見て疑問を感じる私。
誰も何も把握できない状況の中で。
「攻撃を仕掛けて来ないならこっちから行くよっ!!!」
まず先にピーター・フロンドが動き出したのよ。




