波乱の魔女
「続きまして!カリーナ女学園からは文塚乃絵瑠選手の登場ですっ!!!」
マリア・パラスに続いて名前を呼ばれた乃絵瑠は少し緊張した面持ちで歩みを進めていく。
そんな乃絵瑠が試合場に向かったことで。
「文塚先輩頑張れ~っ!!」
「カリーナ女学園は最後まで応援しますっ!!」
ごく僅かだけれど。
学園の生徒達が乃絵瑠の応援を始めてくれたのよ。
そしてそんなささやかな声援が聞こえる中で。
「「「乃絵瑠様~っ!!!応援しています~っ!!!」」」
「「「乃っ絵っ瑠っ!!!乃っ絵っ瑠っ!!!」」」
「「「波乱の魔女降臨っ!!!!今回も頑張れー!!!」」」
前回の試合で乃絵瑠の戦いに魅了された様子の愚かな観客達も声援を送り始めたわ。
「うわぁ~。わりと痛い応援が…。」
…ふふっ。
「罵声よりはマシでしょう?」
「そ、それはそうだけど…。だけどこれはこれで、どうかと…。」
…ふふっ。
「周りがどう思おうと関係ないんでしょ?だったらここでうだうだ言っていないでさっさと行きなさい。」
「う、うん…。まあ、そうね…。」
あまり歓迎できない声援を浴びながら試合場へと歩みを進める乃絵瑠が試合場に上がった瞬間に。
「…ぇ…っ?」
…?
乃絵瑠の表情が一瞬だけ変化したような気がしたわ。
…何?
乃絵瑠の身に何が起きたのか?
それは私には分からない。
だけど当の乃絵瑠は囁くような声で何かを呟いてから、
普段は見せないような嬉しそうな笑顔を浮かべて一度だけ小さく頷いていたわ。
「…うん。大丈夫…。ありがとう…。」
………。
「必ず勝ちますからっ!!!」
私ではない誰かに感謝の想いを呟いてからマリア・パラスと向き合った乃絵瑠は、
必勝の想いを込めながら開始線へと歩みを進めていったのよ。




