なかなかの人望
…ふぅ。
大塚義明が意識を失って倒れたうえに暴走する魔力さえも尽きたことで、
ようやく乃絵瑠の魔術は効果をなくしたようね。
そうして魔術の魔力が失われると同時に虹色の結界も存在できなくなったのか静かに消え去っていったわ。
「急いで医務室に運び込めっ!」
係員達が大塚義明の体を回収して慌てて試合場を離れていく。
その作業の最中に未来が試合場に近付いていったわ。
「乃絵瑠を回収してくるわね~。」
「わ、私も行きますっ!!!」
「………。」
未来に続いて麻美も試合場へと駆け出した直後に、
無言で二人を追う奈々香も試合場に向かって行く。
…さすが乃絵瑠。
…なかなかの人望ね。
これなら私の出番はなさそうね。
私の傍に居るあずさは興味なさそうに黙って様子を見ているけれど。
未来と麻美と奈々香の3人は倒れた乃絵瑠を救出してから急ぎ足で私達のもとに帰ってきたわ。
「急いで治療するわよ!」
私達の中では最も回復魔術を得意とする未来が率先して治療を始める。
その様子を見ていた奈々香は、
ゆっくりと視線を逸らして試合場に振り返ったわ。
「…乃絵瑠さんの努力は無駄にはしません。次は勝ちます。」
勝利を宣言してから試合場に向かって行く。
その後ろ姿を静かに見送ることにしたわ。
「ふふっ、任せたわよ。」
「…はい。」
私の指示に対して一言だけ返事をした奈々香は、
それ以上何も言わずに試合場に上がって行ったわ。




