心のどこかに
試合場から消え去る光。
乃絵瑠が放った光の矢は大塚義明に届かずに二人の中間辺りで大きな爆発を起こして消失したのよ。
…あらあら。
…残念ね。
乃絵瑠の魔力はこれでほぼ尽きてしまったわ。
けれど大塚義明の魔力はまだ僅かだけれど余力があるように思える。
その結果として消耗戦を制したのは大塚義明だったということよ。
「…く…っ!」
悔しさに表情を歪めながら試合場に膝を着く。
そんな乃絵瑠の姿を眺める大塚義明がルーンを構え直す。
「どうやら万策尽きたようだな。」
「…ええ、そうね。悔しいけど、そうなるでしょうね。」
自分の弱さを素直に認める乃絵瑠が拳を強く握り締めながら一度だけ大きく息を吐く。
「これが私の限界…ということでしょうね。」
…そうなるでしょうね。
才能はあってもまだ使いこなせていないという現実。
そして目の前の敵を倒せないという事実。
それらと向き合う乃絵瑠はようやく自分の心と向き合おうとしていたわ。
「やっぱりまだ心のどこかに甘えがあったのかな…。」
…ふふっ。
…ようやく気付いたのね。
「何とかなるんじゃないかな、なんて考えるんじゃなくて、何とかしようと考えるべきだったのよね。」
…ええ、そうよ。
流れや運に任せるのではなくて、
自分の力で目的を叶えるということ。
それが限界を超えるための第一歩。
「もう、これしかないわよね。」
真理にたどり着いた乃絵瑠がルーンを解除する。
そして残された僅かな魔力の全てを右手に集約させ始めたわ。
…ふふっ。
…乃絵瑠の覚悟を見せてもらうわよ。
「ぶざまでもいい。」
…情けなくてもいい。
「格好悪くてもいい。」
…馬鹿にされたっていい。
「そう思えるようになれたから…。だから私は最後まで諦めないわ!」
…そう、それで良いのよ。
「負けるくらいなら死を選ぶだけよっ!」
…だったら見せなさい。
どんな方法でも良いから。
…目的のために戦い続ける覚悟を示しなさい。
「これが…本当に最後よ…!」
傷だらけの体と底を尽いた魔力で。
「ユニバース!!!!」
乃絵瑠は試合場全域に虹色の結界を生み出したわ。




