巻き返せるかしら?
「それでは!第3回戦、第3試合…始めっ!!!!!」
審判員の合図によってようやく始まった乃絵瑠と大塚義明の試合。
二人が立ち向かう血まみれの試合場で大塚義明が乃絵瑠に話し掛けようとしていたわ。
「文塚乃絵瑠か…。俺の相手をするには少し役不足だな。」
「………。」
大塚義明の発言に対して無言で応える乃絵瑠は、
特に反論する様子もないまま静かにルーンを発動させているわ。
光輝く乃絵瑠の両手に生まれるルーンは金色の弓。
眩しく感じるほどきらびやかな金色の光を生み出して弓を作り上げた乃絵瑠は、
即座に光の矢を生み出して大塚義明に狙いを定めていく。
「無駄話が好きな性格だとは思っていなかったんだけど。あまり私を甘く見ないほうが良いわよ?」
大塚義明に役不足と言われたことに対して僅かな不満を言葉にした乃絵瑠は、
先手をうって光の矢を連続で放とうとしていたわ。
「どちらが役不足か教えてあげるわよ!スター・レイン!!」
通常の矢よりも十数倍の大きさを持つ光の矢が乃絵瑠の手を離れた瞬間に百を越える小さな矢に分散して全包囲から大塚義明に降り注いでいく。
…範囲攻撃ね。
一筋の光から生まれた百を越える光の雨。
その一本一本が試合場をえぐり取るほどの小規模の爆発を連続させる中で、
大塚義明は平然と試合場に立ち続けていたわ。
「大した威力だ。それは認めよう。だがこの程度で俺を倒せるとは思わないでもらいたいな。」
「………。」
降り注ぐ光の矢を一切気にせずに対峙する大塚義明を見た乃絵瑠が攻撃を中断してしまう。
「光の矢を炎の結界で遮るなんて無茶をするわね。」
「いや、そうでもない。俺にとっては十分に防げる範囲内だというだけだ。」
「ふんっ!」
初撃を完全に失敗した乃絵瑠。
自信をもって放ったはずの攻撃があっさりと防がれたことで乃絵瑠の表情が僅かに変化したように見えたわ。
…あらあら。
…強がってはいても、乃絵瑠では本当に役不足のようね。
決して手加減していたわけじゃないはずよ。
わりと本気で攻撃に出てあっさりと外してしまってように見えたわ。
…どうやら相手を甘く見ているのは乃絵瑠のようね。
今の一撃だけでどちらの格が上なのかははっきりとしてしまったのよ。
…ここから巻き返せるかしら?
乃絵瑠にそれほどの実力があるのかどうか今はまだ判断できない。
…だけど、大塚義明を殺すつもりで攻撃しなければ乃絵瑠の敗北は確定ね。
すでに実力差が明らかになってしまっているからよ。
そんな圧倒的に不利な状況の中で。
「俺はお前達ほど残虐にはなれないんでな。あまり苦しまないように仕留めてやろう。」
大塚義明が乃絵瑠を脅かす破壊のルーンを発動させてしまったわ。




