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THE WORLD  作者: SEASONS
5月14日
4202/4820

ただのド素人

「その位置でお願います。」



麻美と成瀬智久の二人が開始線に立ったことで係員の進行が始まろうとしたけれど。



「きみは…初めて見る顔だね。大会には初参加かい?」



成瀬智久から麻美に話し掛けてきたわ。



「桜井麻美っていう名前から推測すると、カリーナの学園長だった桜井由美さんの娘さんかな?」


「え、えっと、そ、その…。は、はい…そ、そうです…っ…はいっ。」



初対面の麻美を何も知らない成瀬智久は穏やかな雰囲気を出しながら話し掛けているものの。


怯えてばかりの麻美は哀れにしか思えないほど激しく慌てながら何度も何度も頷いて質問に答えていたわ。



「お、おか、お母さんの…ぶ、分までっ、までっ、が、頑張り…ますっ…っ。」


「ははっ。」



ワタワタとあわてふためきながら必死に返事をしようとする麻美の言動を見ていた成瀬智久は苦笑いを浮かべているわ。



「ものすごく緊張しているね。」


「す、すみ…すみません…っ。」



笑われてしまったことで慌てて謝る麻美だけど。



「ははははっ。カリーナにも君のような子がいるんだね。」



成瀬智久はとても楽しそうに笑ってから微笑ましそうに麻美を見つめていたわ。



「カリーナは変わった人達が多いと思っていたけど。きみのような普通の子もいるんだね。」



………。


…普通?



どこまでも弱気で臆病な雰囲気の麻美を見て普だと判断する成瀬智久の考えは私には理解できないわ。


でもまあ、成瀬智久にとっては制しやすい雑魚に見えたのかもしれないわね。



…確かに現段階では雑魚としか言いようがないわ。



実力未知数の麻美の現在の実力は性格から判断するしかないからよ。



…性格だけで言えばただのド素人で評価する価値さえない、ということになるけれど。



それでも麻美が本当に桜井由美の娘なら、

一度は見守る価値があると思ってる。



…まあ、一度だけ、だけどね。



何度も見守ってあげるほど私は暇な人間じゃないわ。



…ここで負ければ麻美はそれまでの子よ。


…だけどもしもここで勝てるのなら。



もう少し様子を見ても良いと思える気はしてる。



…さあ。


…見せてもらうわよ。



麻美の実力に興味を持ちながら黙って試合の開始を待ち侘びていると。



「それでは第3回戦の第2試合を始めたいと思います!!」



進行を再開した係員が試合開始を宣言しようとしていたわ。


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