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残念だけど
「………。」
………。
「………。」
………。
会話を打ち切ったことで怒りのやり場に困っているのかしら?
沈黙しながらも体をワナワナと震わせる八木真奈美が殺意を込めた瞳で私を睨みつけてくる。
…ふふっ。
…残念だけど殺気で人は殺せないわよ。
私を殺すために必要なのは殺意ではなくて物理的な力。
全てを従えるほどの圧倒的な暴力だけが私を殺す方法なのよ。
…憎悪だけでは人は殺せないわ。
もしもそんなことが出来るのなら、
すでに長野紗耶香を殺しているわ。
だけどそれが出来ないから、
戦いに勝つための力を求めているのよ。
想いに実力が伴わなければ何の意味もないわ。
…意志の違いが実力の違いということを身をもって知りなさい。
八木真奈美はまだ私のいる舞台に立っていない。
真の戦いと呼べる舞台にまだ足を踏み込んでいないのよ。
そのせいで哀れみを感じながら八木真奈美と向き合っていると。
「それでは第3回戦の第1試合を始めたいと思います!!!」
係員がようやく試合の開始を宣言してくれたわ。




