ああ、あれね。
「詳しい説明をする前に一つだけ先に言っておくけど。私は会議室での会話の全てを知っているわ。その理由は言えないけどね。だけど全てを見ていたからその前提だけは覚えておいてね。」
「み、見ていたって…あの場所に栗原さんもいたんですか!?」
「ん~。そうじゃないけど、そんな感じに思ってもらってもいいわ。そのほうが話が早くて分かりやすいでしょ?」
…え、あ、ま、まあ。
「そう…かな?」
栗原さんが全てを知っている理由がものすごく気になるんだけど。
だけどやっぱり栗原さんは理由を教えてくれそうになかった。
「それはまあ…良いですけど。でもそれだと、もしかしてシェリルと桐島さんが会議室に来る前の話も知ってるのですか?」
「ああ、あれね。」
………。
とある人物と王家の血筋に関する絶対口外禁止の事実の内容までもすでに知っているのかどうかを問い掛けてみると。
「天城の名前に関しての話なら私も聞かせてもらったわよ。ただまあ、私一人というわけじゃなくて色々な許可を得て…っていう感じだけどね。」
…許可?
「その辺りは秘密だから言えないわ。だけどその辺りの事情も含めて全て知ってるから、あまり難しいことは考えないほうが良いわよ。」
「そ、そうですか…。」
秘密だらけで詳しいことは全く分からないけれど。
栗原さんは何らかの事情で全ての話を知っているようだった。
「まあ一応その流れで澤木君のことはそれなりに調べさせてもらったから、ある程度の事情は理解してるつもりなんだけど。さすがにシェリルさんの気持ちまで覗き見るのは申し訳ない気がしたから私もそこまでは分からないわ。」
…そ、そうなんだ。
僕に関しては全てを知っているようだけど。
シェリルに関してはまだ把握していないらしい。
「…ということは、僕のことは知ってるんですね。」
「ええ、まあね。勝手に調査したのは申し訳ないと思うけど。澤木君が私の所に来るかもしれないっていう可能性があったから、一応ある程度は…ね。」
…うーん。
「そこも聞きたいんですけど。どうして僕が会いに来るって分かったんですか?」
「それは私が判断したわけじゃないから上手く説明出来ないわね~。だけど次期国王の候補の一人として同じように選出された私になら色々と相談しやすい部分があるんじゃないか?っていう予想だったみたいよ。」
…あ、ああ。
…なるほど。
確かにその通りだと思う。
実際にそういう流れがあったから僕は栗原さんに会いに来たんだ。
「本当に何もかも知ってるんですね。」
「…怒ってる?」
「い、いえ…。怒るだなんて…。ただ僕の気持ちを知ってくれているのなら話がしやすくて良いかな…とは思います。」
「ごめんね。」
…い、いえ。
素直に謝られてしまうと僕も申し訳ない気がしてしまう。
「僕の個人的な事情に関しての相談を聞いていただいているので不満なんてありません。」
「そう?そう言ってもらえると助かるわ。まあ色々と申し訳ない部分はあるけど。とりあえず今は説明を続けるわね。」
「あ、はい。お願いします。」
シェリルに関する仮説の続き。
その話の内容に耳を傾けようとしたところで。
「澤木君ならどう思うかしら?」
栗原さんは意味深な言葉から語り始めたんだ。




