助けてあげたい人
「私はね。自分のこととか将来のこととかそういうことよりもね。どうしても助けてあげたい人がいるの。」
「助けてあげたい人?」
「ええ、そうよ。その人はとても強くて、とても優しくて、誰よりも頼りになる人だけど。だけど…ね。だからこそその人はとても孤独なんじゃないかなって思うのよ。」
「強くて頼りになるのに孤独?」
「だからこそ、と言うべきかもしれないけどね。」
「…ごめん。よく分からないよ。」
「う~ん…。上手く説明するのが難しいんだけど。強くなればなるほど色々なモノを背負わなければいいけなくなると思うのよね。まあ、少し言い方を変えるなら力と孤独は比例するって言うべきかしら。」
「比例?」
「そう、比例よ。強くなればなるほど心は弱くなっていくの。」
…心が弱く?
「これはね、頂点にたどり着かなければ分からないことかもしれないわ。だけど澤木君もいつかきっと知る日が来るはずよ。国王として人の上に立つ日が来れば…自分がどれほど孤独な存在かを認識する日が来るはずなの。」
「…そ、そうなのかな?」
「人の上に立つっていうのはね。きっとそういうものなのよ。だからね。だから私はその人を支えてあげたいと思うの。」
「支えに…?」
「そう、支えよ。私の存在はとても弱くて、とてもちっぽけで、決して支えにはなりきれないかもしれないけどね。それでも何かをしてあげたいと思うのよ。」
「へぇー。凄い人ですね。栗原さんにそこまで言ってもらえるなんて…。よっぽどの人なんですね。」
「ええ、とてもすごい人よ。だからこそとても淋しい道を歩んでいるの。誰にも助けを求められずに。誰にも救いを求められずに。ただただ孤独と戦いながら、自分を犠牲にして生きているの。」
「…それは一体誰なんですか?」
純粋な好奇心を感じて栗原さんが想う人を問い掛けてみたんだけど。
「ふふっ、誰でしょうね。」
何故か栗原さんは泣き出しそうな表情で僕の質問をはぐらかしていた。




