栗原さんの気持ち
「色々と言い難いことはあるかもしれないけどね。だけどここで迷っていても仕方がないんだから、まずは適当に思うことを話してみれば良いんじゃない?」
………。
僕の気持ちの迷いを察してくれたのか。
穏やかな声と優しい笑顔で接してくれる栗原さんは、
無理に話を進めようとはせずに僕の言葉を待つつもりでのんびりと微笑んでくれている。
…シェリルとは違うな。
シェリルは話を急ぐけれど。
栗原さんは決して急がない。
そんな真逆の違いをなんとなく感じてしまう。
…すごく穏やかで。
…すごく落ち着ける気がするね。
普段あまりこういう言葉は使ったことがないけど。
栗原さんの雰囲気を一言で表現するとすれば。
…安らぎかな。
特別に可愛いとか、すごく綺麗とかそういう感じはないけれど。
こうして向き合うだけで心が落ち着けるような穏やかで不思議な気持ちを感じさせてくれるんだ。
…今までちゃんと話をすることは一度もなかったけど。
不思議と栗原さんからは慈愛という優しい雰囲気が強く感じられる気がした。
…だからかな?
だからこそ栗原さんも次期国王の候補の一人として選出されていたのかもしれない。
…でも。
栗原さんは国王の就任を辞退しているらしい。
…聞いてみても良いのかな?
本題とは少し違うけれど。
栗原さんの気持ちも聞いてみたい気がするんだ。
「あ、あの…。一つ聞いても良いですか?」
「ええ、良いわよ。私に答えられることならね。」
迷うことなく即答してくれる栗原さんの優しさに少しだけ甘えを感じながら、
改めて話を切り出すことにした。




